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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
携帯に端子は不要!「ワイヤレス充電」とは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「ワイヤレス充電」は、電極などの接触なしに、さまざまな機器の充電を可能にする技術です。従来10〜20%だった電力伝送効率を飛躍的に向上し、70%もの効率を実現。外出先の充電ブースに「ポンと置くだけ」でケータイの充電ができる時代がやってくるかもしれません!

1.ワイヤレス充電ってなんだ?

1-1 ワイヤレス充電とは

ワイヤレスで充電する技術自体は、19世紀にファラデーが発見した「電磁誘導」を利用するもので、決して目新しいものではない。これまでにも電動シェーバーやコードレス電話などの充電に実用化されてきたが、その伝送効率は低く、10〜20%程度だった。今回紹介するのは、セイコーエプソン株式会社が開発した「airtrans.」という技術で、その特徴は約70%という高い伝送効率にある。

図1 ワイヤレス充電システムイメージ
図1 ワイヤレス充電システムイメージ

環境負荷の低減が社会全体で求められている現在では、たとえ携帯機器のような小さい電力量でも、ロスの多い伝送技術を採用することは難しい。その一方で、機器のワイヤレス化が進行する中、電力の伝送もワイヤレスという要求は日々強くなってきている。エプソンの「airtrans.」技術は、モバイル機器への充電を非接触かつ70%という高い効率で実現することで、端子の劣化や接触不良などの不具合をなくし、より高い利便性を提供することを目的としたものである。

1-2 空芯コイルで高効率伝送を実現する「airtrans.」

前述したように、電磁誘導の原理を利用して、非接触で電力を伝送すること自体は、100年以上前から存在する技術である。交流の電圧を変換するのに用いるトランスが、その代表的な応用製品であり、フェライト(磁性材料)などのコアを共有する2つのコイルで、非接触で電力を伝送し、その際、コイルの巻き数に応じて、異なる電圧/電流へ変換することができる。この際の変換効率は、送電システムや家電製品の電源装置に実装されているのを見てもわかるように、すでに充分に高い。

「airtrans.」のイノベーションは、この無接点電力伝送を、フェライトコアなどのない2組の空芯コイルで、高い効率で実現している点にある。

図2 2.5Wの電力を伝送できる「airtrans.」デバイス
図2 2.5Wの電力を伝送できる「airtrans.」デバイス

左が送電側、右が受電側

(資料提供:セイコーエプソン)

図3 airtrans.の概念図
図3 airtrans.の概念図

電力伝送と信号通信の両方を、一組のコイル対で行っている

(資料提供:セイコーエプソン)

従来のワイヤレス充電製品の伝送効率が10〜20%でよかったのは、シェーバーやワイヤレス電話の子機などの場合には、充電時間がほぼ丸一日と、使用時間に対してはるかに長く、効率が悪くても大きな問題にならなかったからだ。

この点、現在のモバイル機器では、数十時間〜数百時間の使用時間に対して、充電を数時間で終えなくてはならない。そのためには短時間に大きな電力量を伝送する必要がある。そうなると、効率50%以下のデバイスでは発熱が大きすぎて、そもそも実用化できず、70%という高伝送効率は、実用化する上での必須条件でもあったのである。

1-3 「airtrans.」の技術

携帯電話を置くだけで充電できるデバイス、というと単純に聞こえるが、実際にはいくつもの技術的なハードルを越える必要があった。

1.充電するデバイスの認識
 充電器の上に置かれたデバイスが、正規のものなのか、同じようなワイヤレス充電機能を備えているが違うものなのか、判別することができないと、電圧の不一致や仕様の違いから、故障や異常加熱の原因となる可能性がある。
 このために「airtrans.」では、IDの交換は伝送用コイルを使った通信により実行し、IDが合致したときのみ、電力の伝送を行う仕組みを持っている。また、このIDの交換は定期的に実行されるので、充電中の携帯電話のすり替えなどを防ぐことも可能となっている。
2.金属片などの検出
 電磁誘導によって電力を伝える仕組みは、実はIHヒーターなどの加熱の仕組みとほとんど同一だといってよい。IHヒーターの場合には、なべ底の金属に渦巻き状の電流を起こし、その電力は外に取り出されないため、金属の電気抵抗によってほぼ全てが熱に変換される。この渦巻き電流をコイルで取り出すのが、ワイヤレスでの電力伝送なのである。
 したがって、数ワットの電力とはいえ、金属片などが充電台に乗ったまま送電が行われると、金属の異常加熱が起こって、火災などの原因となってしまう。これを防ぐために「airtrans.」では、金属の存在を検知して、危険な状態では送電をスタートしない仕組みになっている。充電中に金属片が差し込まれるといったケースについても、周期的にチェックが行われているので、即座に送電はストップされる。
3.デバイスの置き位置のずれ
 2つのコイルを向かい合わせて、電磁誘導により電力を伝送する仕組みでは、当然、2つのコイルの中心が一致している場合に最も高い効率が得られる。しかし、接触部を持たないワイヤレス伝送の場合には、充電台の上に「置く」だけなので、かならずしも正確な位置にデバイスが置かれるとは限らない。台にへこみをつけるなどの工夫をしても、ミリ単位でのずれは許容する必要があるだろう。「airtrans.」2.5wのデバイスは、±5.0mmまでの水平方向の位置ズレを許容するように設計されている。また、コイルの設計が精密にチューニングされているので、範囲内のズレであれば、ほとんど伝送効率に影響はないという。
4.完全にバッテリの切れたデバイスにも対応
 前述したとおり、「airtrans.」の充電機能はインテリジェントに管理されており、送電を開始する前にID交換を行う。しかし、充電を要する状態のデバイスは、完全に電池切れになっていることも少なくない。このエネルギーを全く持たないデバイスとIDを交換するために、通信に必要なだけの微小な電力伝送を行いつつ、ID交換処理を行い、OKであれば本番の電力伝送をスタートする仕組みを「airtrans.」は実装している。

「airtrans.」の基本的な技術要素は、どれも目新しいものではない。しかし、上に挙げたような安全と使い勝手の向上をインテリジェントに実現するには、たくさんの機能の組み合わせが必要となる。これをコンパクトな基板上に半導体デバイスとして実装するトータルパッケージが、エプソンの「airtrans.」技術におけるイノベーションなのである。

2.ワイヤレス充電のメリット

各種デバイスのワイヤレス化は、携帯電話や無線LANなど、通信から始まった。さらに充電までワイヤレスになることで、どのようなメリットが得られるのだろうか?

端子レス化が可能

携帯電話などのモバイルデバイスが故障する原因の大部分は、端子の破損や磨耗による充電不能が占めるという。半導体のかたまりであり、可動部分をほとんど持たないモバイルデバイスは、内部の部品よりも、端子部分のほうが弱いのだ。

Bluetoothなどのワイヤレス通信機能を備えるモバイル機器にとって、これまでどうしても必要とされてきた端子は、充電用の端子である。ワイヤレス充電機能を備えていれば、一切端子のない製品づくりも可能になり、製品寿命もより長くすることが可能になるだろう。

防水機能や医療用機器への対応

携帯電話に多い故障原因に、水没がある。日常的に身に着ける製品だけに、本来であれば腕時計並みの防水機能が望まれるのが携帯電話なのだが、防水機能つきの製品はまだまだ少ない。この理由のひとつが、充電用の端子の存在なのだ。端子部のカバーにパッキンをつけるなどの対応をしても、水没に耐えうるレベルの防水機能を持たせるのは簡単ではない。ワイヤレス充電による端子レス化ができれば、防水化はずっと容易になるだろう。

また、消毒や洗浄が必要不可欠な医療機器においても、ワイヤレス充電は重要な役割を果たす。これまで電池が切れたら使い捨てだった電子機器も、ワイヤレス充電が可能になれば、ランニングコストと環境負荷の低減が可能になる。

より便利で快適な充電環境

キャリアごとに充電端子の共通化が進み、出先で充電器を借りて充電ということも可能になったが、携帯電話の電池切れは、未だに面倒な問題の1つである。また、ケーブルをつないでの充電は、決して使い勝手のよいものではない。

実は緊急で充電が必要になるのは、自宅ではなく、外出先である。外出先で電池切れを避けるために、電池の残り容量が充分でも「念のため」フル充電せざるを得ないのが、今のモバイルデバイス環境なのだ。この状況をワイヤレス充電の共通規格を普及させることで変え、いつでもどこでも、置くだけで快適に、スマートに充電ができる環境が、「airtrans.」の指し示す未来なのである。

3.将来に向けたビジョンと目標

ワイヤレス充電の技術として「airtrans.」は、充分完成されたものである。まだ期日こそ明らかにできないものの、遠くないタイミングで「airtrans.」搭載の携帯電話が発売されるのは間違いないという。それでは、ワイヤレス充電という技術の今後の目標はどのようなものなのだろうか。

高速充電を実現するために

リチウムイオン電池の改良は、電気自動車の実現に向けて急ピッチで進められている。また、自動車に限らず、リチウムイオン電池を搭載する製品は増える一方だと言えるだろう。こうした製品において、今後重要なポイントとなるのが、高速充電技術である。充電はあらゆる製品において、できるかぎり短時間に完了するのが望ましいのは言うまでもない。

例えば現在の携帯電話なら、2時間ほどの充電で、300時間ほどの待ち受けが可能だが、多機能化にともなって、より大容量のバッテリを搭載した、より長時間、音楽再生やワンセグの鑑賞ができる製品が求められつつある。バッテリ容量が大きくなって、問題になってくるのが、充電時間の問題である。

この課題を解決するために高速充電技術が、バッテリ側、充電器側の両方から、研究・開発されている。ワイヤレス充電においても、単位時間当たりに伝送する電力量が増加すれば、改めて発熱の問題も出てくるため、伝送効率のさらなる向上が要求されることになるだろう。

より広範な応用

エプソンが現在実用化している「airtrans.」デバイスは、0.5Wと2.5Wの2種類である。とくに2.5Wは、携帯電話の充電用途に合致した仕様である。現在のところ、モバイル機器の充電用途に、実用化は限定されているといえるだろう。

しかし、今後のワイヤレス充電技術を考える上では、前述の電気自動車などの、大容量、大電力の機器についても当然視野に入ってくるはずだ。渦電流による金属の加熱などの問題を、インテリジェントに解決したワイヤレス充電は、感電などの可能性がない分だけ、接触式充電よりも安全性が高いともいえるのだ。

大電力を伝送するには、高電圧や大電流を利用する必要があり、そのどちらも感電やケーブルの加熱、ショートによる火災などの危険を秘めている。送電側、受電側のそれぞれを密閉した状態で運用できるワイヤレス充電は、モバイル機器のような小さい電池だけでなく、大型電池の充電においても有望な技術だといえるのではないだろうか。

取材協力 : セイコーエプソン株式会社

掲載日:2009年10月28日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2009年09月16日掲載分

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