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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
“考えるコンピュータ”WolframAlphaとは?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「Wolfram|Alpha」は、SFの世界ではおなじみの「人間の質問に答える万能コンピュータ」を目指すシステム。コンピュータの発明以来の「人類の夢」を実現するウェブサービスになるかもしれません!?

「Wolfram|Alpha」とは?

Wolfram|Alphaは、2009年5月15日に正式公開され、世界的な反響を呼び起こしたウェブサービス。Wolfram|Alphaを開発したウルフラム・リサーチは、スティーブン・ウルフラム(Stephen Wolfram)氏により創設された研究開発機関である。

1959年生まれのウルフラム氏は、15歳で素粒子論の学術論文を執筆し、オックスフォード大学を17歳で卒業、20歳で理論物理学の研究により、カリフォルニア工科大学で博士号を取得したという折り紙つきの天才でもある。1986年にウルフラム・リサーチを設立し、1988年にリリースした「Mathematica」は世界的なベストセラーとして、今でもバージョンアップを続ける定番学術演算ソフトである。

図1 Wolfram|Alphaのトップページ
Wolfram|Alphaのトップページ

Wolfram|Alphaを端的に表現すれば、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」に登場する「HAL9000」というコンピュータ(劇中では人間同様の人格を持つ存在として、"ハル"と呼ばれる)を、現実のものにしようとするものである。その証拠というわけではないが、Wolfram|Alphaのエラーメッセージの画面には、HAL9000の「視覚」の象徴として映画に出てくる赤いカメラのイメージそのままのアイコンが表示される。

図2 エラーメッセージ
エラーメッセージ

「ごめんなさいデイブ、その処理は実行できないようです」と答えるWolfram|Alpha。デイブとは「2001年宇宙の旅」の登場人物で、HALのセリフをそのまま使っている。

「Wolfram|Alpha」の実力

2-1 数字に対する強さは、「Mathematica」仕込み

数学、物理における科学技術演算については、「Mathematica」のテクノロジを継承するWolfram|Alphaは圧倒的な強さを発揮する。例えば、「471707459227239511205640458706051851127996736193」という巨大な数をWolfram|Alphaに入力してみよう。

図3

48桁の数字を、普通に処理ができているだけでも驚きだが、「Property」の項目を見ると、この巨大な数を素因数分解して、「7784383939733057」という素数の立方数(整数の3乗の数)であることを回答している。この回答に掛かった時間はわずか数秒だが、データベースの参照ではなく、リアルタイムに処理が行われていなければありえない回答であることは間違いないといえる。
 「こうした機能は『Mathematica』と原則的に同じなので、『Mathematica』をインストールしたノートPCでも、ほとんど同じことが可能です」(ローラン・サミエ氏)とのことだが、ウェブで利用できるサービスとしては、圧倒的な有効数字の大きさを持っているのは間違いないだろう。

ちなみに「Microsoft Excel」では、有効桁数は15桁に制限されており、「99999999*99999999」という演算でさえ、実行すると、答えは「9999999800000000」となる。「1」とならなければならない最後の桁が、四捨五入されて、ゼロになってしまうのだ。ちなみにGoogleの答えも9.9999998 × 10^15で、同じく有効数字に制限がある。

2-2 3次元のグラフもリアルタイム生成

図4

Wolfram|Alphaの大きな特徴の1つは、様々な問いに対する答えを、数字だけでなく、グラフィカルな表現でも示してくれる点にある。例えば、ごく単純な数式、x+y=zを入力するだけで、次のような3Dグラフを表示してくれる。
 数学に関する処理は、「Mathematica」の機能をそっくり引き継いでいるだけに、多項式の因数分解や様々な関数の積分、定積分、関数のテイラー展開まで、ほぼ万能ともいえるほどの能力を発揮する。


図5 図6

y=sin(x)のテイラー展開を実行し、リアルタイムにグラフを生成

sin(x)の定積分。面積をグラフで表示してくれる。


これらの機能自体は、「Mathematica」をはじめとする学術演算用アプリケーションとしては、新しいものではないが、無料で利用できるウェブサービスとしては、極めて画期的なものだといえるだろう。


図7

ヘモグロビンのたんぱく質としての3次元構造を表示

また、数学だけでなく、物理や化学などの情報についても、リアルタイム処理による3次元表示を提供するのもWolfram|Alphaの画期的な機能である。

とにかく科学全般の質問に対する回答能力は極めて強力で、かつその表示も洗練された高度なものだといえるだろう。"falling from 10m"(10mの高さから落下すると)や"distance to the moon"(月までの距離は)といった漠然とした問いに対しても、落下に要する時間や最終速度、変動する月までの距離の最大、最小、平均値と今現在の距離、といった適切な答えを返してくるから驚きである。


2-3 統計情報をグラフィカルに表示

図8

各国のGDPや人口といった統計データにもWolfram|Alphaは強みを見せる。一番分かりやすいところで、日本とアメリカのGDPの比較を行ってみたのが次の結果である。
 比率が表示されるだけでなく、対数軸を使った過去30年間のグラフもリアルタイム生成されており、名目GDPだけでなく実質GDPや、現地通貨での金額、1人当たりGDP、成長率、インフレ率、失業率といった詳細なデータが整然とした表で示される。


図9

各国の主要統計はもちろんのこと、河川や山岳、湖沼などの地理データ、世界中の都市の主要統計と気象データなどがデータベース化されており、自由に比較参照することができる。秀逸なのはリアルタイムで反映される気象データで、例えば"weather mitaka"と入力するだけで東京都三鷹市のデータが次のように表示される。  現在の気温や湿度、風速といった基本情報はもちろんのこと、過去一週間の気象データがグラフ表示されるのだ。すべての処理はリアルタイムで行われており、グラフの表示期間を1日〜10年間で変更することも可能となっている。


2-4 Wolfram|Alphaの活用法

図10

これまで紹介してきたWolfram|Alphaの機能は確かに強力なものだが、理数系の研究開発に携わっていないビジネスパーソンにとっては、なかなか利用の仕方が見えてこないのも事実だろう。この点について前述のローラン・サミエ氏は「一般の人の誰にも関係があり、関心のあるジャンルとしてはファイナンスの分野が挙げられるでしょう。住宅ローンの返済グラフや、株価の比較とグラフ化などを実行すれば、Wolfram|Alphaの数理分析のパワーを実感できるはずです。」と語る。

右は"mortgage"と入力すると表示されるWolfram|Alphaの住宅ローン解析画面で、金額や年数、利率を自由に入力することができる。例えば、右記のように年利3%で3000万円の30年ローンを組んだ場合、支払い総額は4553万円となり、月々の支払いは12万6481円となることがわかる。日本式のボーナス払いなどは考慮されていないものの、十分役に立つ回答だといえるだろう。自分でエクセルなどを用いて計算するよりも、はるかに手軽で、かつグラフも交えた分かりやすい結果が得られる。


「Wolfram|Alpha」の目指すもの

発表当時は、Googleキラーとなるか、という憶測も流れ、画期的な検索エンジンとして報道されることも多かったWolfram|Alphaだが、実際にはGoogleのようにウェブから情報を参照するシステムではない。理数系の情報処理能力は、高校生や大学教養課程の宿題ならば丸投げできるほどに強力である一方、「宴会の幹事がウェブ上のレストラン情報を事前にチェックする」といった目的には適さない。Wolfram|Alphaの目指すものは一体どういったサービスなのだろうか。
 ウルフラム・リサーチのプレスリリースによれば、Wolfram|Alphaは次の4つの要素から構成されるという。

  • 精選されたデータ
     広範な分野において専門家によって精選された何テラバイトものデータを、コンピュータによるアルゴリズム処理に適した形式に変換する
  • 動的計算
     ユーザからのクエリ(質問文)に対して、膨大なデータから関連する項目を抽出し、最適なアルゴリズムを適用して新しい関連知識を作成・統合する
  • 直観的な言語理解
     日常の言語での入力を理解するために、人間の表現方法を分析し、これらのパターンを自動的に認識するアルゴリズムを継続的に改良しつづける
  • 計算美学
     ユーザインターフェース設計への新しいアプローチとして、ユーザの入力に対して、オンザフライで計算された知識を、明確かつ効果的なページレイアウトでリアルタイム表示する

また、Wolfram|Alphaはそのすべてがウルフラム・リサーチの「Mathematica」技術を使って開発され、6百万行近いMathematica コードを含むという。スタート時点でのWolfram|Alphaは、5ヵ所のコロケーション施設に配置される約1万個のプロセッサコアで構成されたクラスタによって、クエリを並列処理しており、毎秒1800クエリを処理する能力を有するという。

世界のTOP15に入るスーパーコンピュータをバックボーンとするWolfram|Alphaは、世界中の情報を、Googleのように単に蓄えるのではなく、コンピュータで処理可能な形で蓄積し、構造化することで、コンピュータの論理回答能力を限界まで発揮させ、人間の自然な要求にそのまま答えられるコンピュータを目指している。
 つまり、冒頭で引き合いに出した「HAL9000」のような「人間のように会話でき、人間よりもはるかに膨大な知識を持ち、はるかに高い情報処理能力を備えるコンピュータ」を、直球で実現しようとしているのがWolfram|Alphaなのである。その取り組みはまだ2009年5月にスタートしたばかりだが、その将来性には大いに期待が持てそうだ。

取材協力 : Wolfram Research Asia Ltd.

掲載日:2009年9月30日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2009年08月19日掲載分

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