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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「光プラスチックモーター」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「光プラスチックモーター」は、光を当てるだけで回転するまったく新しい駆動装置。この技術を使えば、太陽電池を使用することなく、太陽の光だけで走るクルマが実現するかもしれません!

光プラスチックモーターとは?

光プラスチックモーターとは、光を当てることで伸び縮みするプラスチック(光プラスチック)をベルト状にプーリーに巻きつけ、光を当てるだけで回転する装置で、東工大の資源化学研究所所長、池田富樹教授を中心とするグループが開発に成功した。

写真1 光プラスチックモーター

右から紫外線、左から可視光線を照射すると、ゆっくり回りだす。

 通常、光をエネルギーとして利用するには、太陽電池などの変換装置を介する必要があるが、この技術では光が分子に起こす変化を、そのままエネルギーとして取り出すことができる。軽量なことはもちろん、理論上のエネルギー効率もきわめて高いといえる。現時点では、直径1センチ程度の小さなプーリーを1分間に1回転させる程度のゆっくりとした動作だが、光プラスチック自体のパワーは、人間の筋肉の10倍以上というから、大きな可能性を秘めた技術なのだ。

1-1 光を運動に変える魔法のプラスチック

「光を当てると回転する」と言ってしまえば単純に聞こえるが、池田教授は回転運動だけを目的に光プラスチックを研究してきたわけではない。光によって性質が変化する光機能材料についての広範な研究がその背景にはある。

アゾベンゼンの変化を液晶の性質で、全体に伝える

光プラスチックモーターの動力を生み出しているのは、アゾベンゼンという物質で、紫外線を当てると棒状から「くの字」型へと分子構造が変化し、可視光線を当てると元に戻る性質がある。しかし、この変化は分子レベルのことなので、動きとして取り出すことは難しい。  こうした分子レベルの変化を、ドミノ倒しでよりマクロなスケールへと伝える(協同現象)性質を持つ物質として液晶がある。液晶の性質を持つ分子とアゾベンゼンを組み合わせたプラスチックを開発することではじめて、光を当てることで性質が変化する「光機能材料」とすることができたのだ。

図1 液晶の性質とゴムのような弾性を兼ね備えたプラスチック

紫外線を浴びると、くの字に曲がるアゾベンゼンにより、全体の構造が無秩序に変化するプラスチック。光を吸収して収縮、伸張する。

この光プラスチックは、通常は液晶分子が一方向に揃っているが、紫外線を当てると、分子の方向が一斉にバラバラになる。それにより縦方向の長さが短くなり、横方向に厚みが増す変形を起こす(収縮)。この縮む力こそが、光エネルギーが運動エネルギーに変換されて発生するパワーなのだ。

50時間5000回の耐久試験でも変化ナシ

こうして開発された光プラスチック材料は、耐久性に優れ、荷重を掛けた状態で50時間、5000回の収縮を繰り返しても、性能に変化は全くないという。

図2 光プラスチック「尺取虫」

この光プラスチック材料とポリエチレンをラミネートしたフィルムは、それ単体で光を当てると曲がる性質をもっていて、上図のような「尺取虫」の他、「ロボットアーム」のような動きをさせることもできる。

1-2 光プラスチックモーターの仕組み

光プラスチックモーターのベルト部分には、円周方向に分子の方向を揃えた(配向させた)光プラスチックフィルムが用いられている。

図3 光プラスチックモーターの図解

紫外線を当てると表面が縮み、可視光線を当てると元に戻る。この収縮と伸張の力がフィルム表面で同時に起こる結果、プーリーを伴って回転運動が起こる仕組みだ。  この回転を起こす力学的な仕組みは、まだハッキリとは解明されていないのだが、サイズの異なる2つのプーリーを用いることで、紫外線で縮む力と可視光線で伸びる力のバランスがうまく取れるのではないか、と解釈されている。

光プラスチックモーターの秘める可能性

写真2 池田教授、中さん、宮里さん
池田富樹教授(中央)と、実験を担当する中裕美子さん(右)宮里遼さん(左)

池田富樹教授(中央)と、実験を担当する中裕美子さん(右)宮里遼さん(左)。

ここまでを読んでおわかりのことと思うが、光プラスチックモーターは光運動材料の唯一の活用方法ではない。光プラスチックのパワーを回転以外の運動として取り出す可能性も十分考えられるだろう。ただ、蒸気機関や内燃機関が爆発という現象を回転に変えることではじめて、動力源としての地位を確立した点を鑑みても、光エネルギーをベルトとプーリーだけで回転運動に変えることのインパクトは大きい。  ピストンやカム、コイルや磁石、太陽電池などの複雑な機構がないので、軽量・コンパクトである点は圧倒的な優位点であり、光ファイバと組み合わせた医療用の超小型モーターなどの用途も検討されているという。

「定年まであと6年、それまでにミニカーを光プラスチックモーターで走らせるのが目標ですね」と池田教授。軽量性を活かして乗用車や航空機、船舶などの大きな動力として利用することも、その視野には入っている。

光の吸収を現状のプラスチック表面の数μm(マイクロメートル)から、より深い層まで力を発揮させるための高分子の開発や、光プラスチックとラミネートさせているポリエチレンとの接合を、接着ではなく、より強力な化学結合に変えることで強度を上げる研究、分子レベルでのより精密な制御によるパワーアップなど、光プラスチックの改良は日々進められている。

取材協力 :東京工業大学資源化学研究所高分子材料部門

掲載日:2009年8月 5日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2009年04月15日掲載分

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