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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「GI型プラスチック光ファイバ」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「GI型プラスチック光ファイバ」は、従来のプラスチック光ファイバの常識をはるかに超える通信速度を実現する光ファイバ技術。特にLANなどの屋内高速通信の切り札として今、大きな注目を集めています!

GI型プラスチック光ファイバとは?

光ファイバには、大陸間のインターネットのバックボーンからFTTHまで幅広く用いられているガラス製のものと、デジタルオーディオなど短距離の接続に用いられるプラスチック性のものの2種類がある。そういう意味では、プラスチック光ファイバはすでに馴染み深い製品の1つだともいえる。しかし、従来のプラスチック製のファイバは、ガラス製と比較して通信速度や距離が大きく劣り、限定された用途にしか用いることができなかった。今回ご紹介するGI型プラスチック光ファイバは、従来のプラスチック製のファイバの限界をはるかに超える、40Gbps以上の通信速度を実現する別次元の光ファイバ。慶應義塾大学の小池康博教授が、従来不可能とされてきた技術的な課題を克服して作り出した新しい技術である。

光ファイバの種類

光ファイバには素材の違いとは別に、その中を通過する光の経路(モード)の違いによって、シングルモードとマルチモードの大きく2つの方式がある。シングルモードでは、光はほとんどファイバの中心だけをまっすぐ通過する。マルチモードでは、中心だけでなく、光ファイバの壁に反射して蛇行しながら通過する複数経路の光を全て利用する。

図1 シングルモードとマルチモードの図解
シングルモード光ファイバの特徴

シングルモードのガラス製光ファイバは、大陸間通信などに用いられていて、理論的には100Tbpsを超えるほどの超高速通信ができる。シングルモードでは光の経路がほぼ1つしかないため、信号の時間的なばらつき(劣化)がなく高速な通信が可能となる。しかし、シングルモードのガラス製光ファイバは、光の経路を単一にする関係上、直径約0.01ミリ、髪の毛の10分の1程度まで細くしなくてはならないため、曲げにもろく、建物内の配管を通すことも難しい。また、ファイバが極めて細いため、接続部の位置合わせにも高い精度が要求され、システム全体のコストも高くなる。

マルチモード光ファイバの特徴

一般にマルチモード光ファイバは、光の経路をあまり限定しない。このため、0.5ミリ程度の太いファイバを用いることができ、アクリル樹脂などのプラスチック材料を用いることで、丈夫で曲げ強度が強く、扱いやすい光ファイバを、安価に製造することができる。しかし上の図1を見ても分かるように、中心をまっすぐ通る光と、外側で反射しながら通る光との間で、道のりの長さに違いがあるため、通信距離が長くなればなるほど、信号の時間的ばらつきが発生する。この問題のため、従来のマルチモード光ファイバは、通信距離も通信速度もシングルモードに比べて大きく劣っていた。

GI(Graded Index)型、マルチモード光ファイバ

マルチモード光ファイバにおける、上記の問題点を克服するために、慶應義塾大学の小池教授が採用したのが、GI型光ファイバである。

図2 GI型光ファイバの図解

GI型では光は正弦波のように蛇行する。

Indexとは物質の屈折率のことなので、Graded Indexとは屈折率の分布に勾配がつけられているという意味になる。通常の光ファイバは、シングルモードでもマルチモードでも、屈折率の高い芯材をより屈折率の低い材料で包み込む構造をとっていて、そのことで起こる、全反射という現象を利用して光を閉じ込める。一方、GI型は中心から外側に向かって、滑らかに屈折率が下がっていくように設計されていて、光は曲線的に屈折してファイバ内に閉じ込められる。
 光の速度は屈折率に反比例するため、外側を蛇行しながら通る光の速度は、中心部を通る光よりも速くなり、結果として、各経路の距離の違いが速度で相殺されることになる。つまり、入り口から同時に入った光は、その経路を問わず、ほとんど同時に出口から出てくるのだ。
 この構造により、GI型光ファイバは従来のマルチモード光ファイバより、はるかに高速に通信することができる。このGI型のプラスチック光ファイバこそ、次世代の中短距離、屋内通信の切り札として大きな注目を集める技術なのである

14年の時を掛けて成功した、GI型プラスチック光ファイバ開発

太くて曲げにつよく小さなプラグをポンと差し込むだけで接続完了。そんなプラスチック光ファイバの扱いやすさを、オーディオ用光ケーブルを通じてご存知の方も多いだろう。このプラスチック製ファイバの通信速度を向上させることで、LANやディスプレイなどの接続がより高速で手軽なものになることは、容易に予想することができる。しかし、小池教授が取り組んだ高速プラスチック光ファイバの開発は、けっして簡単な道のりではなかったという。
 屈折率の勾配をつけることで、通信速度を向上させるというアイディア自体は、小池教授がプラスチック光ファイバの開発に取り組み始めた当時から存在していたが、そのためには、必然的に2つ以上の異なる屈折率の材料を混合することになる。いかに材質の純度を上げ透明度を向上させるか、が主要な研究課題であった当時の光ファイバの世界において、「不純物」を混入すると捉えざるを得ないその試みは、異端に近い存在だったのだ。
 小池教授は14年にわたってこの課題に取り組みつづけ、ついに1990年、まったく新しいナノ技術による高速・低損失のGI型プラスチック光ファイバの提案にいたる。それはそれまで6メートルほどの伝送距離しかなかったプラスチック光ファイバの可能性が大きく広がるトピックであった。その後、1994年にはNEC、富士通、三菱レイヨンなどの光通信、マルチメディアメーカー45社によるプラスチック光ファイバーコンソーシアムが結成され、実用化に向けた本格的な取り組みがスタートしたことは、報道を通じてご存知の方も少なくないはずだ。
 このほかにも、液晶ディスプレイのバックライト用の光拡散ポリマーなど、光をコントロールするプラスチックに関する数多くの研究が評価され、小池教授は2009年現在、ノーベル賞に最も近い日本人科学者のひとりとして国際的な注目を集めている。

プラスチック光ファイバが実現する未来

安価で扱いやすく、かつ高速通信を実現できるGI型プラスチック光ファイバは、LANはもちろんのこと、家電やホームセキュリティから、医療、教育、エンターテインメントまで、幅広い分野での応用が期待されている。このビジョンを、小池教授は「Fiber to the Display」という言葉で表現している。
 非圧縮ハイビジョン映像の伝送にはギガビットを超える帯域が必要だが、GI型プラスチック光ファイバは、その10倍以上の通信速度を実現することができる。これは今よりはるかに高画質、大画面の映像を、家庭や職場に非圧縮のままに伝送して、ディスプレイを圧倒的な臨場感を持つ「窓」として活用できる未来を意味している。

図3 非圧縮映像と圧縮映像の比較図

圧縮映像には映像の劣化だけでなく、時間の遅延もともなう。

これまでのネットワークは、バックボーンはともかく、オフィスや家庭においてはイーサネットなどの物理的な帯域限界に阻まれ、圧縮されたデータや映像、メールなど、限定されたメディアしか取り扱うことができなかった。
 小池教授は、大口径でフレキシブル、壁や天井の裏をローコストかつ容易に張り巡らせることのできるGI型プラスチック光ファイバを用いることで、ネットワークの帯域制限を解き放ち、光ファイバと高解像度ディスプレイを媒介とした、人と人とが直接"Face to Face"でコミュニケーションできる未来を提案しているのだ。

取材協力 :慶應義塾大学 小池研究室

掲載日:2009年8月 5日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2009年03月18日掲載分

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