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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
空気でPCが動く?金属空気電池ってなんだ?

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「金属空気電池」は、酸素を活用して高いエネルギー密度を実現する電池。高出力とバッテリー持ちを両立する必要のある電気自動車のエネルギー源として注目を集めています!

金属空気電池とは?

金属空気電池とは、現在最もエネルギー密度(重量に対する放電可能な電力量)が高いと考えられるリチウムイオン電池を超えるエネルギー密度を持つ2次電池(充電可能な電池)の可能性の1つとして研究されている技術で、昨年には、トヨタ自動車が開発することを発表し、京都大学ほかの大学でも研究がスタートしている。エコカーの大本命である電気自動車のエネルギー源として必要となる、よりエネルギー密度の高い電池の開発が目的だ。


通常の電池では、プラスとマイナスそれぞれの電極に、酸化および還元にあたる化学反応を起こす物質が用意されていて、物質が持つ化学エネルギーを電力として取り出す仕組みとなっている。

図1 通常の電池と金属空気電池(例:亜鉛空気電池)の仕組みの違い
図1 通常の電池と金属空気電池(例:亜鉛空気電池)の仕組みの違い

これに対して金属空気電池では、上の図のように、プラス極側で電子を奪う物質として、空気中の酸素を活用する。大気中にほぼ無尽蔵に存在する酸素を活用するためプラス極の反応物質の重量を理論上はゼロにできる。電池の重量は、反応物質とこの反応を仲介する電解質の重さが大部分を占めるので、片方の重量をゼロにできる金属空気電池は、エネルギー密度を飛躍的に向上できる可能性があるために注目を集めている。

金属空気電池自体は、すでに補聴器などの電源用のボタン電池として実用化されているのだが、これらの製品は充電できない1次電池であり、2次電池としての実用化には、まだまだ数多くのハードルが存在するという。

金属空気電池の優位点

原理的に大容量

金属空気電池は、原理自体は20世紀の初頭には発明されており、決して新しい技術ではないが、エネルギーを多く貯蔵できる点では、現在のリチウムイオン電池よりも優れている。最大のポイントは前述したように、プラス極の反応材料に空気を用いる点で、反応材料の比重が同じだと仮定すれば、この点だけで重量が半分近く減ることになる。同じサイズなら、マイナス極に用いる反応材料を倍にすることができるので、2倍近くの容量を実現できる計算だ。効率のよい負極金属を使用し、さらに酸化力の高い酸素を使用することで、金属空気電池のエネルギー密度は、計算上はリチウムイオン電池の数倍まで見込めるという。

図2 エネルギー密度の比較
図2 エネルギー密度の比較
優れた安全性

エネルギー密度が高い2次電池は、原則的には危険性が高い。電極のショートや過負荷が掛かった際に、設計限界を超えて反応が進んだ結果、異常高温になる可能性があるからだ。ある意味、可燃物にも似た危険な側面があることは否めないのだ。

しかも、リチウムイオン2次電池は、有機溶媒を電解液として使用しているため、高温になると発火する危険性すらある。もちろんこの欠点を踏まえて、リチウムイオン電池には多重の安全対策が施されているのだが、製造上の欠陥により発熱・発火に至る事例があるのは、ノートPCや携帯電話のバッテリーの異常加熱や変形、発火などの報道を通じてご存知のことと思う。

この点、より高いエネルギー密度を持つ金属空気電池にも同じ問題がありそうに思えるが、まず電解液に使用するのが水にアルカリ性の金属水酸化物を溶かしたものであるため、物理的に発火する可能性がゼロである。また、酸素の供給速度以上には反応速度が上がらないため、異常な高温にはなりにくい点でも安全性に優れているといえるだろう。

低い環境負荷

また、現在主流であるリチウムイオン電池などは、その材料にコバルトなどの希少金属を用いているため、自動車などの大型で大容量な用途に用いるには、コストはもちろんのこと環境負荷の面でも課題を残すが、亜鉛を初めとする金属空気電池の材料は、埋蔵量の多い物質なのでそうした心配がない。排出する物質もほとんどなく、放電時に酸素を吸い、充電時に酸素を放出するだけなので、大容量化しても環境汚染などの心配もない。

老朽化した電池の廃棄に関しても、亜鉛、および酸化亜鉛は安全な物質であり、電解液も中和すれば安全なアルカリ性水溶液に過ぎないので、比較的扱いやすく、環境にもやさしい電池だといえるだろう。

2次電池の実用化に向けた課題

高いエネルギー密度を持つ電池として、とくに電気自動車の実用化に向け、大いに期待されている金属空気電池だが、2次電池としての実用化にはいくつかの大きな課題がある。

●耐久性の向上

金属空気電池の負極に有望とされる亜鉛には、充電を繰り返すと形状が変わってしまい電極としての性能が劣化してしまう問題がある。これを解決するには、亜鉛電極と電解液を充電時に交換し、回収してリサイクルさせる機械的充電方式などが考えられている。また、酸素は極めて活性な物質なので、それを反応させる電極触媒の耐久性を維持することは大変難しい。
  さらに、電解液の耐久性も課題のひとつで、アルカリ性の電解液は空気中の二酸化炭素に触れると反応して劣化してしまう。金属空気電池は大気中の酸素を活用するため、密閉することができないため、二酸化炭素の遮断は大きな課題である。酸素を透過させつつ二酸化炭素を通さない膜などを開発することが、問題解決のために必要となる。


●性能の安定化

現在の金属空気電池(1次電池)は、プラス電極が空気に常に触れているため、湿度や二酸化炭素濃度、温度などの影響を受けやすい。空気の取り込み量も多すぎると電解液が乾燥して性能低下を招くし、少なすぎれば反応自体に要する酸素が不足してこれも性能低下の原因となる。密閉されずオープンであることに端を発するこれらの問題を解決するための電池構造の開発も、克服すべき重要な課題である。

金属空気電池の将来像

金属空気電池を2次電池として活用するためには、まだまだ多くの課題があり、開発に要する年月も目処が立っているとは言い難い。それでも、トヨタをはじめとする企業や国内外の大学研究機関が研究に取り組んでいるのは、リチウムイオン電池の性能向上が限界を迎える中で、実用的な電気自動車のエネルギー源として、金属空気電池は数少ない有望株のひとつだからである。

また、大容量で高出力、かつ環境負荷の少ない蓄電池が実用化されれば、太陽光や風力など、天候によって出力変動の激しい自然エネルギーによる発電設備の蓄電設備としても大いに役立つに違いないだろう。CO2排出量を削減しつつ、クリーンエネルギーへと舵をきらざるを得ない今日、電池の性能向上は社会全体の目標だと言っても過言ではないだろう。

取材協力 :京都大学大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻

掲載日:2009年4月15日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2009年2月18日掲載分

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