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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「フェムトセル」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「フェムトセル」。携帯電話に久しぶりの新しい話題です。家庭やオフィスに極小の専用基地局を設置するこの技術は、携帯電話の世界に革命をもたらすかもしれません!

1.フェムトセルとは?

1-1 基地局のカバー範囲を表す言葉「セル」

携帯電話を英語でセルラーフォン(cellular phone)と呼ぶが、これは地域を半径数kmのセル(cell:細胞)に分割して、各セルを担当する基地局を介して通信を行うところから来た名称である。通常の基地局は、半径数kmのセルをカバーし、これをマクロセルと呼んでいるのだが、3G携帯の使用する2GHzの周波数帯では電波の直進性が増すため、屋外に鉄塔を立てて設置するマクロセルの基地局だけでは、屋内にまで十分な電波を送ることが困難である。この問題を解決するために、より小さな基地局を屋内向けに設置することや、屋外の電波を増幅して屋内に送り込むリピータ設置などの取り組みが行われてきた。

図1 各基地局の設置イメージ
図1 各基地局の設置イメージ

資料提供:ソフトバンク モバイル

1-2 半径10m前後、ユーザ数名の「フェムトセル」

マクロセル用基地局が半径数kmのカバー範囲を持つ一方、小さな基地局としては、マイクロセル(半径数100 m:数100人のユーザ)、ピコセル(半径数10 mメートル:数10人のユーザ)が開発、設置されてきた。マイクロ→ピコと進んできた小規模化をさらに進め、カバー範囲を半径10 m前後、数名のユーザにまでコンパクトにしたものが、フェムトセルである。なお、「フェムト」とは、ピコの次に小さい数量を表す単位で、基礎となる単位の10のマイナス15乗倍(=0.000 000 000 000 001倍、千兆分の一)の量であることを示す(マイクロは10のマイナス6乗倍、ピコは10のマイナス12乗倍)。

フェムトセルの基地局は、無線LANのアクセスポイントのような形で提供されるが、この基地局を電話の固定回線や光ファイバ、CATV用ケーブルなどと接続すると、携帯電話が受信できるような電波を発する。つまり、ユーザが独自に持っている回線を通じて、携帯電話網という公的なインフラにアクセスすることになるが、携帯電話側からは、従来の携帯電話基地局と通信しているのと変わらないようにみえる。

2.フェムトセルの仕組み

従来のマクロセルやマイクロセルは、百人単位のユーザによる同時通話、数km〜数百m半径を対象にしてきたため、そのアンテナ設備や制御装置の規模も金額も大きく、携帯電話キャリアの設備投資の大きな部分を占めてきた。担当する通信の量と電波出力は極めて小さくなるものの、フェムトセルも必要とする機能はマクロセルと変わらない。しかし、想定する設置台数が飛躍的に多くなるため、その実現方法にはいくつかのバリエーションが検討されている。

2-1 仕組み1

1つ目は、全く従来どおりのシステムで基地局を増やしていく方法。この場合、マクロセルと比較してセル数が数百倍に増えるため、基地局間の連携を担当している機器(RNC: Radio Network Controller, BSC: Base Station Controllerなど)も数百倍のトラフィックコントロールを行う必要が出てくる。つまり、従来のセルと同じ方式でフェムトセルを進めていくと、基地局自体をどれほどローコスト化しても、基地局を連携させ制御するRNC/BSCに掛かる負荷と要求する制御基地局数は大きく増えることになる。RNC/BSCなどの機器は、事業用通信機器として専用に開発されたものなので、その価格も数千万規模。したがって、フェムトセルの普及が進むと、これら基地局制御が、コスト面で大きな問題となるだろう。

図2 従来のシステムで基地局を増やす方法
図2 従来のシステムで基地局を増やす方法

資料提供:ソフトバンク モバイル

2-2 仕組み2

フェムトセルは、機能こそマクロセルと同一ではあるものの、その担当する通話・通信の数量は2桁も下回り、はるかに小規模。その制御をマクロセルと同一の枠組みで行うのは、あまり合理的ではない。そこで、図3のように、フェムトセルの連携・制御を行う機器を、ブレードサーバ等のより廉価で汎用のシステムで構成する仕組み(フェムトセル用のゲートウェイ)も検討されている。

図3 フェムトセル用にゲートウェイを設置する方法
図3 フェムトセル用にゲートウェイを設置する方法

資料提供:ソフトバンク モバイル

2-3 仕組み3

さらに将来的には、VoIPで採用されている標準プロトコルであるSIPを用いて、フェムトセル用ゲートウェイの上流を、インターネット経由でのVoIPで実現することも検討されている。さらにゲートウェイに掛かる制御負荷を減らすために、ゲートウェイですべてのフェムトセル基地局制御を行うのではなく、各フェムトセルの小型基地局に制御処理の1部を負担させるクライアント型の分散処理の技術も開発中だという。

2-4 実際のサービスはどうなる?

ここに挙げた3つの方式は、それぞれ厳密に分類できるものではない。これら複数の仕組みの中間的な形も存在しうる。ソフトバンク モバイルでは、2008年春にフェムトセルのサービス開始を検討しており、2007年10月現在実証実験を行っているところだ。同社によれば、まだ未定ではあるもの、サービス開始時には1と2の中間的な仕組みを取る可能性が高く、将来的にはSIPによるVoIPへと移行していくのではないか、としている。

3.法制上の課題

ベストエフォート型のインターネットや、ライセンスを受けない無線LANとは異なり、携帯電話基地局は通信のインフラとして、電波法、電気通信事業法などの規制を受けている。フェムトセルは、ユーザの回線を公的インフラに利用するシステムであるため、制度面の整理が必要となっている。

3-1 局開設の申請が必要

現状では、基地局1局ごとに免許の申請が必要である。フェムトセルのサービスをスタートするには、これを包括的に行うことのできる仕組みが必要となる。

3-2 QoSが必要で、回線の切断が許されない

フェムトセルは各世帯やオフィスに設置されるものだが、当然、第三者がサービスエリア内に入らないことを保障するものではなく、したがって公共の携帯電話基地局と同様のQoS(Quality of Service:サービス品質保証、帯域をあらかじめ確保して遅延や途絶がないことを保証する技術)が要求される。しかし、現状のIP網を利用する場合にはこれを満たすには課題がある。また、現状では基地局にはUPS(無停電電源)の設置が法的に必要不可欠とされているが、これもフェムトセルの展開には法制上の障壁となる。

3-3 事業設備としての制約

基地局は携帯電話事業の設備に該当するため、設置には無線技術者が必要、回線は事業用として取り扱いユーザ回線の使用は不可、電気通信主任技術者の管理監督下に置かなくてはならない、ユーザによる電源のon/offが不可能、など一般に普及するには、高いハードルが複数存在する。


現在フェムトセル実証実験を首都圏で行っているソフトバンク モバイルによると、2008年春のサービス開始を目指し、こうした制度面の課題についても総務省と共同で取り組んでいる最中だという。逆に言えば、フェムトセルの実施において、技術面の課題はほぼクリアしており、あとは制度面の整備だけが残されている段階にあるといえる。

4.フェムトセルのユーザメリット

フェムトセルにより実現される環境は、まったく新しいものではない。というのも、自宅やオフィスにおける携帯電話の利用は、データ通信も音声通話もすでに実現していることだからだ。では、フェムトセルのもたらすメリットとはどういったものなのだろうか。

4-1 専用の基地局で安定通信が可能

普段使用する携帯電話はそのままで、オフィスや家庭に引き込まれたブロードバンド環境の通信速度を活用できる点が、フェムトセルの利点の1つだ。数百人単位で利用するマクロセルやマイクロセルと異なり、フェムトセルであれば光ファイバなどで安定して潤沢に提供される通信速度を、フロアで独占的に利用できる。数十から数百Mbpsの速度のブロードバンドがあるのに、携帯電話だけがはるか彼方のアンテナと通信しなければならないという矛盾を、フェムトセルは解消する。これにより、電波状態の心配がなくなるのはもちろん、通話が集中する年末年始などの混雑の問題もなくなり、高速通信を安定的に利用することが可能になる。

4-2 利用料金の低減

基地局などの設備投資、メンテナンス費を、利用者に配分しているのが現在の携帯電話の料金体系であり、通話料金の定額化などが難しいのも、それにより急激に通話時間や通話本数が増えた際に、インフラ整備が間に合わない可能性がある点にある。

フェムトセルであれば、少なくとも基地局のキャパシティの問題は解決している。例えフェムトセルを利用するユーザが24時間通話し続けたとしても、該当する基地局が各ユーザのもとにある以上、何の問題もないからだ。これがマクロセルであれば、カバーするエリアのユーザ全員が同時通話できるキャパシティを確保するためには大変な設備投資が必要になり、その設備投資を担保できるように料金設定すると、競争力のある価格にすることは難しいはずだ。

フェムトセルのサービスが、必ずしも料金の定額化や値下げを行うとは限らないが、仕組みの面で、無線部分のインフラがユーザ側に確保されるという点で、それを促進する可能性が高いといえる。

4-3 有線、無線を統合するホームステーションを実現

ブロードバンドは、インターネットから始まって、電話、テレビまでをカバーする方向に進んできたが、携帯電話だけは別系統の通信に留まってきた。これは料金体系についても同様で、1本の光ケーブルやCATVに付随するサービスと、3G携帯電話に付随するサービスの間を統合することができない原因になっている。

そもそも、電気や水道、ガスなどのインフラが、使用量に応じてリソースを消費するのと異なり、通信のインフラでは、パケットをどれほど通したからといって、実際にリソースが消費されるわけではない。この考え方を普及させたのがADSLであり、インターネット接続のほとんどを定額制に移行させることで、日本のブロードバンドの普及と発展を支えてきたといってよいだろう。

フェムトセルは、家庭やオフィスにおけるデータ通信のインフラを、光ファイバやケーブル、ADSLのモデムを中心としたホームサーバに一元化することで、全サービスを包括的に扱うことを実現する可能性を秘めている。情報通信のインフラを一元化して定額で提供し、利潤はコンテンツやサービスで得るビジネスモデルへとIT社会が進化していくとすれば、フェムトセルは、そのための鍵となる技術でありサービスの1つといえる。

取材協力 :ソフトバンク モバイル株式会社

掲載日:2009年4月 8日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2007年10月17日掲載分

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