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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「テレイグジスタンス」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「テレイグジスタンス」。テレイグジスタンス型ロボットが実用化されると、インターネット経由で世界中のロボットに飛び乗り、好きな場所へ瞬間移動する不思議な体験を味わえるようになります!!

1.テレイグジスタンスとは?

テレイグジスタンス(Tel-existence:Tel=遠隔、Existence=存在)とは、遠隔地に配置したロボットを自分の分身として利用することで、人間を時空の制約から開放しようとする技術のこと。この技術を利用することで、自宅にいながらにして、遠く離れた場所で、あたかもその場にいるかのような臨場感を持って作業やコミュニケーションを行うことが可能になる。テレイグジスタンスは1980年代に東京大学の舘教授によって提唱された概念であり、単純なテレオペレーション(遠隔操作)とは、以下の観点で異なっている。

 ○視界をすっぽり覆う特殊なディスプレイや全周囲ディスプレイを利用することで、遠隔地の視覚や聴覚を、そのまま現実の視覚や聴覚として感じることができる。
 ○リアルタイム通信を用い、その場に居ながらにして遠く離れた場所で自由自在に行動できる。
 ○遠隔地のロボットが受けた衝撃や皮膚感覚は、遠い場所で操作する人間に正確にフィードバックされる。

つまり、テレイグジスタンスとは、自分が遠く離れた場所に本当にいるかのような感覚をもてるシステムなのである。


写真1 TELESAR2のマスタコックピット

現在の人型ロボットは大きく2つのタイプにわけることができる。1つは鉄腕アトムのような「自立型ロボット」で、前もってプログラムされた動作または学習によって得られた動作をロボット単体で行うことができる。もう1つはガンダムや鉄人28号のような「操縦型ロボット」で、ロボットの内部に人が入り込んだり、遠隔から操縦したりすることで動作する。これらに対し、テレイグジスタンスは、離れていてもロボットが受けた感覚を操縦者が自分自身の感覚として知覚するという点で、「分身型ロボット」とでもいうべき新しい位置づけになる。いわば、ガンダムのモビルスーツを、人が中に入り込むことなく、遠隔にいながらにして実現するものである。
 では、テレイグジスタンスのしくみについて、最新のテレイグジスタンスロボット「TELESAR2」を例に説明していこう。TELESAR2はマスタスレーブシステム(マスタコックピットとスレーブロボット)から構成されており、マスタコックピットに座った人の動きに合わせてスレーブロボットが器用に動く。さらにスレーブロボットが感じ取った感覚をマスタコックピットに座っている人にリアルタイムで伝えることができる。


写真2 TELESAR2のスレーブロボット

もう少し詳しく説明すると、マスタコックピットは6つの自由度を持つ外骨格型アームと肘計測のための小型センサの合計7自由度から構成されており、インピーダンス制御という技術によりアームの抵抗が排除されているので、操縦者はほとんど拘束感を感じることなくスレーブロボットを操作することができる。一方、スレーブロボットのアームは人間の腕と同じ7つの自由度(肩関節3方向・肘関節1方向・手首の関節3方向)で構成されていて、人の腕と同じ動きを忠実に再現することができる。また、力を計測するセンサも取り付けられており、スレーブロボットの腕や指に加わった力を操縦者に伝えることができる。このセンサのおかげで、たとえ視覚がない状態でも、操縦者はスレーブロボットがスポンジのようなやわらかいものをつかんでいるのか、あるいは石などの硬いものをつかんでいるのかがわかるようになっている。


2.テレイグジスタンス研究の道のり

テレイグジスタンスの研究の原点は1975年から行われた盲導犬ロボットの研究にあったという。盲導犬ロボットでは、ロボットが認識した空間情報(障害物がある・ないなど)を、いかに臨場感をもって人間に伝えることができるのかが重要な課題であったのだが、この研究の中でテレイグジスタンスという概念が誕生したのである。
 そして1982年、テレイグジスタンスを実現するための第一歩としてテレイグジスタンス立体視システムが開発された。これは、まず操作する人がHMD(Head Mounted Display)と呼ばれる特殊なディスプレイを装着して頭を動かすと、その頭の動きと同じように遠隔地にあるカメラロボットが動き、カメラの映像を操作している人に提示するというシステムである。つまり、操作者はカメラロボットが自分の頭と一体になったような感覚を味わうことができたのである。この開発成功に続いて1985年には、テレイグジスタンスビークルの開発が行われた。これはゴルフカートを改造して作られたもので、遠隔地からあたかも自動車(移動ロボット)に乗り込んでいるような感覚でロボットを移動制御することができるようになった。

写真3 テレイグジスタンスビークル



そして1989年になって、ようやくロボットの中に入り込んだような臨場感を味わいながら、ロボットを自分の分身のように自在に制御できる人型ロボット「TELESAR1」の開発が実現したのである。

写真4 再帰性投影技術

再帰性投影技術を使うことで、ロボットの中に人間が入っているように見える!

その後、1994年になると、ネットワークを介してテレイグジスタンスを実現するアールキューブ(Real-time Remote Robotics:実時間遠隔制御ロボット技術)構想が提唱され、当時の通産省にアールキューブ構想委員会が設置された。この構想では、インターネットなどのネットワークを利用することで、どこからでも自由に使えるロボットの実現を目指しており、たとえば、どこかの国にあるテレイグジスタンス用のロボットが空いていたら、そのロボットに入り込んで、その国を旅行したり山に登ったりすることができるようになるというものであった。
 2000年にはアールキューブ構想の一環としての「人間協調・共存型ロボット」プロジェクトの中で、ホンダの人間型2足歩行ロボットを使ったテレイグジスタンス実験も行われた。こうした数々の研究成果を積み重ねた結果、ようやく2005年にTELESAR2の開発に成功したのである。
 TELESAR2では、遠隔ロボットを操作する人が味わう臨場感だけでなく、遠隔地側にあるロボットにも操作している人の存在感を与える「相互テレイグジスタンス」の実現にも取り組んでいる。具体的には、再帰性投影という技術を用いて操縦者の映像をスレーブロボットに映し出すことにより、スレーブロボットにマスタコックピットの操縦者が実際に入り込んでいるかのような存在感を与えることができるようになっている。

3.テレイグジスタンスの近未来

テレイグジスタンスの有用性が見えてくればくるほど、その機能に対する要求も次第に高いものへとエスカレートしていく。たとえば、視覚に関する情報なら現在でもかなり高いレベルで要求を満足できるが、スレーブロボットが触っているものが、ザラザラしているかツルツルしているかなどの触覚に関する情報もやりとりしようとすると、新しいセンサの開発が必要になる。現在、東京大学の舘研究室では新しい触覚センサの開発や、触原色原理に基づく皮膚感覚ディスプレイの研究にも取り組んでおり、触覚に関する実用化も時間の問題となりつつある。
 テレイグジスタンスが実用化されると、「大きさからの解放」「空間の制限からの解放」という大きな特長をもつロボットの誕生を期待できる。たとえば、前者の例では図1に示すように小型のスレーブロボットを用いることにより、昆虫の視点で不思議な世界を体験したり、ミクロの決死圏のように、カプセル型の内視鏡カメラロボットの中に入り込んで医療を行ったりすることができるようになるかも知れない。また、後者の例では図2に示すように、空間を飛び越えて家にいながらにして世界中の海中を散歩したり、長期入院している人でも家族と一緒に自由に外出したりする感覚を味わうことができるようになる。
 もちろん、従来のテレオペレーションの進化形として、遠く離れた人同士が時間や距離を越えて直接会って議論を交わすことができるユビキタス会議システムや、救援者に起こる二次災害を避けつつロボットを分身として用いて救援活動を行い、被災者に救援者の存在感を示すことで安心感と励みを与えることができる、遠隔地での人命救助への応用も広がることが期待されている。

図1 「大きさからの解放」                図2 「空間の制限からの解放」


取材協力 :東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 舘研究室

掲載日:2009年4月 1日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年9月3日掲載分

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