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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「TransferJet」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「TransferJet」は、”飛ばない電波”というユニークな発想から生まれた全く新しい高速無線通信。これまで利用されたことのない電波の縦波を利用した技術がITとインターフェースの世界に革命をもたらすかもしれません!

1.タッチするだけの「わかりやすい無線」

写真1 TransferJetデモ用システムの構成

手前がフォトストレージとデジカメ、奥の液晶テレビに転送画像を表示する

ソニーが独自に開発した近接無線転送技術、TransferJetの機能は、SuicaやPasmoなどに採用されているFeliCaの通信速度を超高速にしたものと例えるとわかりやすいかもしれない。TransferJetは両方の機器に電源を持つ双方向通信でありFeliCaとは原理的にも異なるのだが、”タッチ”する動作が通信の開始を表す点で、感覚的には似通っているからだ。
 今回の取材で用意されたデモは、基本的に2008年のCES(全米家電協会主催の家電・情報・通信・エレクトロニクスに関する総合展示会)で公開されたものと同じシステムで、TransferJetを搭載したフォトストレージとそれに接続する液晶HDテレビという構成。フォトストレージ上の通信エリアにTransferJet搭載のデジカメを近づけると、自動的に通信を開始してデジカメ内の写真データが、高速に転送されて次々にテレビに映し出されてゆく。実効レートで375Mbpsのスピードというだけあって、USBやメモリカードと同じ感覚で、1秒間に数枚ペースでサクサクと写真が表示される。
 どの機器も機能的には同じTransferJetカプラー*を搭載してシンメトリーな双方向通信を行うので、送信側、受信側といった区別はない。フォトストレージ上のイルミネーションはJetのJの字をデザインしたもので、通信の確立・終了などをユーザにわかりやすく伝えるインターフェースの工夫のひとつだ。

*カプラー(coupler)とは、2つ1組で動作する通信装置のこと。広義には「連結器、結合器」を指す。

2.電波の縦波を使った世界初の通信規格

「無線通信の規格は数多くあり、利用可能なほとんどの周波数が使い果たされつつある。したがって、革新的な方式の登場は考えにくく、現在策定中のものも含め新規格の99%以上が既存規格の正常進化版だろう。」そうお考えの方も少なくないのではないだろうか。正直なところ「5分でわかる」取材班も同様に考え、お話をうかがうまでは通信距離が極端に短いという予備知識こそあれ、TransferJetをBluetoothなどの既存の無線技術の延長線上にあるものと考えていた。

図1 TransferJetカプラーの構造と動作原理

TransferJetは、従来用いられなかった電波の縦波成分を活用する。式をみると、放射電磁界が距離Rに反比例しているのに対して、誘導電磁界は距離Rの2乗に反比例している。この違いがTransferJetの電波が「飛ばない」秘密である。

ところが取材を行ってみると、TransferJetはこれまで利用されたことのない電磁波の性質を用いた全く新しい技術であることがわかった。現在広く用いられている電波、赤外線、可視光など電磁波を利用した通信は、それぞれ全く異なる技術のようでいて、電磁波の横波(放射電磁界)を利用している点では共通している。一方のTransferJetは、縦波(進行方向と同一ベクトルの成分、誘導電磁界)を利用する点で、世界に類を見ない全く新しい通信技術なのだ。
 電波の縦波を使う、という発想は偶然の思いつきではない。「無線LANやBluetoothなどの無線は遠くまで飛んでしまうゆえに、シンプルな目的でも暗号化や認証の手続きを行わなくてはならない。もし超短距離しか飛ばない電波があれば、よりシンプルかつセキュアに目の前の機器にデータを転送できるはずだ」という逆転の発想から”飛ばない無線”を求めてたどり着いたのが電波の縦波の利用なのだ。
 これまで一般に用いられてきた電波の横波と比べ、縦波(誘導電磁界)は距離が大きくなると急速に減衰する。この性質により3cm以内という短い通信距離を実現。またTransferJetカプラーは通常のアンテナとは異なり、2つひと組みになって初めてアンテナとして機能する点も、セキュリティ向上に役立っている。

3.TransferJetの想定する活用シーン

TransferJetの仕様はおよそ次のようなもの。

 ●中心周波数:4.48GHz帯
 ●送信電力 :-70dBm/MHz以下(平均電力)
           国内では微弱無線局の規定に準拠 諸外国はその国の電波規則に準拠
 ●転送レート:560Mbps(物理層)/ 実効レート 375Mbps(MAX)
           通信状況に応じて最適な転送レートを選択する機能を搭載
 ●通信距離 :3cm以内を想定

既存の無線規格と比較して、TransferJetが特徴的なのは一般的なUWBの700分の1以下という送信電力の小ささと、3cm以内という通信距離の短さ。送信電力が国内の微弱無線局の規定に準拠しているため、屋内・屋外、さらに車の中でも利用でき、極めて幅広い活用シーンを期待することができそうだ。

図2 商品展開イメージ

AV家電からPC、デジカメ、ケータイまで幅広い機器間で利用可能

資料提供:ソニー株式会社

わずか3cmという距離から考えられるのは「有線で接続してもいいけれど、より便利で快適な転送方法は?」というニーズ。現在メモリカードやUSB接続で行っているデータのやりとりが「タッチするだけ」になれば、より快適な使い勝手が実現できるだろう。実効レート375MbpsのスピードはUSBと同等以上なので、無線のボトルネックを感じさせることもないはずだ。

図3 CDの視聴、ダウンロード購入のイメージ

通信距離が短いため複数のCDを区別してタッチすることが可能

資料提供:ソニー株式会社

また、通信距離が3cmのTransferJetなら、上図のように複数ある隣り合ったCDそれぞれに問題なく接続し、目的のコンテンツだけを転送することができる。携帯電話をかざして一定時間だけ曲を視聴し、気に入った曲をその場で携帯電話にダウンロードするようなサービスも可能だ。また、TransferJetはFeliCaなどのICカードによる決済と、共存可能かつ同時通信できるので、購入・決済までをワンタッチで行うこともできるという。

4.インターフェースデザインが今後の課題

今回TransferJetのデモを見て感じたのは「なぜこれが今までなかったのだろう」ということ。一度TransferJetを見てしまうと、デジタルカメラなどのデータを小さなメモリカードやUSBケーブルの抜き差しで移動するのは、いかにもアナログな印象になってしまう。
 今回のデモ体験を振り返ると、TransferJetのインターフェースのなじみのよさは、無線有線を問わず他のデータ転送技術と一線を画するものだといえる。2008年1月のCESで発表され、すぐさま7月には国内外の主要メーカー15社の参加するコンソーシアムが設立されたのも、TransferJetの素性のよさが高く評価された結果だろう。
 ただし、自由度の高い双方向通信におけるインターフェースの工夫はまだまだこれからの課題。単純にデジカメ2台の間で画像の転送を行うことを考えても、どちらからどちらに転送するのか、洗練されたインターフェースを考えるのは簡単なことではない。動作の癖や好み、文化的な約束などを考慮したマンマシンインターフェースの構築が重要となる。さらに一括転送だけでなく、HDカムの連続再生などの随時転送もTransferJetの可能性のひとつだが、かざしてピッという一括転送と、接続を維持したままとなる随時転送の区別などもクリアすべきハードルだろう。
 こうしたインターフェースの課題を、TransferJet本来のなじみやすさを損なわずにひとつひとつ解決してゆくことが、今後の開発のカギとなるのではないだろうか。また、基礎技術から一貫して開発された日本発の通信プロトコルとして、今後いかに世界展開していくのかも注目だ。電波の縦波利用という全く新しい領域を切り開くテクノロジーである点も興味深い。この極めて有望な技術TransferJetの製品化、早ければ2009年を目指しているというから、今後の動向からますます目が離せなくなりそうだ。

取材協力 :ソニー株式会社

掲載日:2009年4月 1日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年8月20日掲載分

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