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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「発電床」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「発電床」。乗客が歩くときに発生する小さな振動エネルギーもかき集めれば立派なクリーンエネルギーになります!

1.発電床とは?

発電床(はつでんゆか)とは、人が歩くときや物が移動するときに発生する床の振動を利用して発電を行う床型の発電機のことだ。その仕組みを図1に示す。まず、床下に圧力や振動を電圧に変換してくれる圧電素子(ピエゾ素子)を並列に接続しながら沢山敷き詰めておく(写真1)。その床の上を人が歩くと、床が振動するが、その振動エネルギーが圧電素子に加わることで電圧に変換される。その圧電素子から得られた出力をできるかぎり損なわずに蓄電装置に貯めていくことで、各種設備への電力供給に使えるようになる。蓄電装置にはスーパーキャパシタと呼ばれるエネルギーを蓄積・供給できるデバイスが使われている。

図1 発電床とは

資料提供:慶応義塾大学 武藤研究室

写真1 床に敷き詰められた圧電素子

資料提供:慶応義塾大学 武藤研究室

ここで、圧電素子について簡単に説明しておこう。別名ピエゾ素子とも呼ばれているこの素子は、圧電体が持っている圧電効果を利用して力を電圧に変換したり、電圧を力に変換したりすることができ、ガスコンロやライタの点火、スピーカーなど幅広い用途で使われている。圧電体の素材としては金属酸化物であるPZTなどが主に使われている。


2.発電床・実用化までの道のり

発電床は振動を電力に変換する振動力発電の1つとして、慶応義塾大学 環境情報学部 武藤研究室で考案されたもので、武藤教授がJR東日本の大塚会長(当時社長)に提案したことがきっかけとなり、JR東日本と武藤研究室との間で共同研究が開始された。この共同研究では、2006年夏、JR東日本の新宿本社で最初の実証実験が行われ、その結果をベースに2006年10月16日から12月8日まで、実際に乗客が歩く際の振動で電気を起こす「発電床」が東京駅に設置され、実験稼働が行われた。
 発電床が設置されたのはオフィス街への通勤客が多い、東京駅丸の内北口の8通路のうち6通路のSuicaゲート。乗客が発電床を踏むたびに、その振動で1人あたり0.07W〜0.1Wの発電が行われ、1日最大約10kW秒(100W の電球を100 秒点灯する電力量)という発電量を得ることができた。ただし、実験3週目(延べ約80万人の通過)からは耐久性低下にともなう発電量の減少もみられたという。この実証実験は大きな反響を呼び、日本政府もこのプロジェクトに協力することになった。
 そして、2008年1月19日から2ヵ月間行われた東京駅における2回目の発電床の実証実験では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の協力(出資)を得て、前回の実験よりも単位設置面積あたり10倍(1名が改札を通過する時に1.0W秒)以上の発電量を目指して実験が行われた。今回は設置面積を前回(約6平方メートル:改札通路だけに設置)よりも広くして約90平方メートルとし、改札だけでなくコンコース部分や階段部分にも敷設し、実験全体としては1日に500kW秒(100Wの電球が約80分点灯する電力量)の発電量を目指した。使われた圧電素子は1平方メートルあたり600個だという。
 その結果、土日を除く平日では500kW秒以上を達成し、ピーク時には766kW秒を記録した。このことから、Suicaのオペレーションシステムの電力(ゲートの開閉など、メカ部分の駆動電力は除く)をこれでまかなえることが立証された。

写真2 3回目の東京駅による発電床の実証実験

資料提供:慶応義塾大学 武藤研究室

今後の実用化に向けての課題としては、発電効率と耐久性の向上を挙げることができる。発電効率については圧電素子の高密度化と蓄電装置の見直しにより、さらに改善を図ることが可能だ。また、耐久性については、圧電素子を支える内部構造や保護材(ゴムマット)などに工夫を行うことで、女性のヒールなど、先のとがった靴で強く踏まれた場合でも圧電素子が破損しないようにしなければならない。JR東日本では、近い将来、自動改札や電光表示器などの駅設備の電力の一部を発電床で得られた電力でまかなえるようにしたいと考えている。

3.次のステップとして「温度差発電」にも期待大!

こうした新しい発電に対するアイデアが注目されている背景には、クリーンなシステムで発電を行うことで、少しでもエコロジーやグリーンIT化の推進に貢献したいという企業姿勢がある。JR東日本の場合、人が歩くときの微弱な振動エネルギーを再利用することで、エネルギーの無駄を減らし、「環境負荷の小さな駅・鉄道」の実現を目指している。
 一方、慶応義塾大学 環境情報学部の武藤佳恭教授は、振動エネルギー以外にも存在する無駄に捨てられているエネルギーにも注目している。一般的に、いろいろな場所に存在しながらも無駄に捨てられている小さなエネルギーを電気エネルギーに変換することをパワー・ハーベスト技術(power harvesting technology)と呼んでいるが、発電床を手掛けた武藤研究室では再利用エネルギー(Reusable Energy)の1つとして、自然に湧き出ている温泉などの熱と大気温度との温度差を電気エネルギーに変換する「温度差発電」の研究にも着手している。
 武藤研究室で開発されている温度差発電装置の様子を図2と写真2に示す。これは2枚のペルチェ素子の間の温度差で発電することができる装置で、一方のペルチェ素子にはパソコン用のCPUヒートシンク(CPUの冷却装置)を使うことで室温とし、もう一方のペルチェ素子には保冷剤などの対象物を載せることで両者の間に温度差を作り出して発電する。
 ペルチェ素子とは、電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果(180年ほど前に発見された物理現象)を利用した素子。今回はこの素子を、温度差を与えると発電する素子として活用している。ペルチェ素子の発電量は温度差が大きいほど大きくなる。また、温かい対象物(カイロなど)を載せた場合には、冷たい対象物を載せた場合の反対向きの電流が発生する。今回の装置では発電の様子がわかるように、低電圧・低電流でも回転する高性能なソーラーモータが取り付けられており、装置の上(ペルチェ素子)に保冷剤を載せるだけで、ソーラーモータが元気よく回転し始める。

図2 温度差発電装置の仕組み

資料提供:慶応義塾大学 武藤研究室

写真3 温度差発電装置の外観

資料提供:慶応義塾大学 武藤研究室

クリーンエネルギーの代表選手といえば、太陽光発電だが夜間は発電できない。また発電床も人が歩いていないと発電できない。しかし、火山国で温泉が豊富に湧き出ている日本では、温度差発電なら、温泉のお湯と気温との温度差を利用することで24時間365日、クリーンエネルギーを作り出すことが可能だ。発電床同様、今後の実用化がおおいに期待されるところだ。

取材協力 :慶応義塾大学 環境情報学部 武藤佳恭研究室

掲載日:2009年3月25日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年8月6日掲載分

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