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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「人体通信」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「人体通信」。握手をするだけで名刺交換が済んでしまう時代がもうすぐやってきます!?

1.人体通信とは?

人体通信とは、ケーブルを使わずに人体(誘電体)を通信媒体として利用する通信方式のこと。つまり、体をケーブルのかわりに使って情報をやりとりしようという話だ。人体通信はケーブルが不要になるという大きなメリットがあり、ウェアラブルコンピュータの世界や患者のバイタルサイン(脈拍や血圧などの生体情報)を扱う医療現場などで大きな期待を持たれている。また、それ以外に、セキュリティ強化の観点でも注目されている。ケーブルレスの通信といえば無線通信をイメージする人も多いだろう。従来の無線通信では、たとえ微弱な電波であっても数メートルは飛んでしまうが、人体通信は人体の表面から外には通信データが漏洩しない。また、電波を放射する必要がないことから無線に比べて消費電力が少なくて済み、少なからずエコにも貢献する。

図1 人体通信

資料提供:カイザーテクノロジー

 これまで開発されてきた人体通信には電流方式と電界方式がある。電流方式は体に電流を流して通信する方法だが、データ信号の発信機と受信機を直接肌に密着させる必要があったり、汗などの影響で通信が不安定になったりといった問題があり、なかなか実用化が進まなかった。一方、電界方式は、誘電体である人体がもともと持つ体表面の静電気の層に信号を与えて通信する方法である。静電気の層は体の表面数cmをおおっていることから、靴や服などの上から(つまり非接触)でも通信可能なので、現在は電界方式を中心に実用化が始まろうとしている。

 ここ1、2年の間に発表された人体通信をいくつか紹介すると、2007年10月に開催された映像・情報・通信の国際展示会「CEATEC JAPAN 2007」において、NTTドコモのブースで人体通信モジュール(カイザーテクノロジーが開発)を内蔵した携帯電話の試作機が展示された。また、アルプス電気のブースでも、カイザーテクノロジーの技術をベースとした人体通信モジュールを使って音楽データを伝送するデモが行われた。これらのブースで展示された通信モジュールのデータ伝送速度は約100kbpsで、使用された周波数は10.7MHzの高周波、消費電力はBluetoothよりも1桁小さい。

 なお、カイザーテクノロジーでは慶應義塾大学と共同で、人体通信で培った技術を応用した人体電力伝送(人体を経由して送電できるシステム)の開発にも取り組んでおり、これらの技術を総称して「Wirelesswire/ワイヤレスワイヤー」と呼んでいる(図1)。


一方、NTTエレクトロニクスでは、2008年4月からNTTマイクロシステムインテグレーション研究所が開発した人体通信技術「RedTacton」を使った「Firmo(フィルモ)」のサンプル販売(80万円/セット)を開始している。同製品は、Firmoキー(送信機)、Firmoリーダ(受信機)、ID受信用Windowsソフト、タッチプレートなどから構成されており、通信速度は230kbpsだ。こちらも電界式のため、体の表面だけでなく衣服、手袋、靴を身に着けたまま、壁や床に組み込まれた端末との2点間で通信できる。

2.人体通信・実用化までの道のり

人体通信という概念は、1990年代にアメリカのMITメディアラボで提唱されたのが始まりで、その原理は、送信機で人体上に信号(電界)を発生させて通信を行うというものだった。しかし、当時はまだ、人体上の電界を検出するセンサが開発されていなかったことから、概念が提唱されただけで、実現までには至らなかった。
 一方、話はまったく変わるが、ICの高速化が進んで数十GHzで動作するICが設計・製造される時代に差し掛かった1990年代、数十GHzで動作するICウエハーの検査装置が求められるようになってきた。それまでのICウエハー検査装置では、検査の針(プローブ)を直接ウエハーに接触させて波形を計測していたが、数十GHzという高周波にもなると、この方法では矩形波が変形し正確に測定できないという問題が浮上してきたのである。
 そこで、「光電界センシング技術」を用いたまったく新しい非接触のプローブを使った検査装置の開発が進められた(図2)。これは、外部から電界を受けると光の屈折率が変化する電気光学結晶を使った技術で、入射したレーザー光の偏向状態が外部電界の影響を受けて変化する様子を複数の光学部品とフォトダイオードを用いて計測するという方法だ。1996年NTTアドバンステクノロジがこの技術を応用したオシロスコープを開発したことをきっかけに、この技術を応用すれば電界式の人体通信を実現できるのではないかと考えた企業(NTTグループ各社)により、電界式の人体通信トランシーバ開発の取り組みが始まったのである。

図2 人体通信の原点はICウエハーを検査するための光電界センシング技術だった!

資料提供:カイザーテクノロジー

2-1 実用化の目処をつけた「トライデント電界センサ」

光電界センシング技術による電界センサの登場で、人体通信の開発は大きく一歩前進したが、実用化に向けての大きな課題が残されていた。それは製造コストである。光電界センシング技術では、光部品を使うことからコストがかかり、また製造過程でも高い精度を求められる。光軸をミクロン単位で調整するため、衝撃に弱く壊れやすいという点も大きな課題であった。
 そういった状況の中、2005年、NTTドコモと共同で研究を進めていたカイザーテクノロジーは、光を使わない新しい電界センシング技術による電界センサ「トライデント」の開発に成功した(図3)。従来の光学方式では、電圧変化を光の強弱に置換して検出するが、トライデント方式では電圧変化を磁気の強弱に置換して検出するのである。通信速度は、広帯域特性が特徴の光学式が10Mbpsを達成しているのに対し、狭帯域特性が特徴のトライデント方式は約100kbps程度と低速だが、高感度であることと受信帯域を自在に制御できる特殊な機能を持つことから機器の小型化と高機能化に有効でありID認証等の用途には最適とされている。また、トライデント方式では光部品を使わないことから、低価格、小型化が可能で、すでに人体通信の商用化(センサの量産化)にも目処がついているという。

図3 トライデント電界センサを使った人体通信

資料提供:カイザーテクノロジー

ここで、ひとつ気になる点がある。それは健康への影響だ。結論からいえば、まったく心配はない。たとえば、身に着けて使うMP3プレーヤなどの機器からも常時電界は発生しているが、電界方式による人体通信の電界はこうした機器と同じレベルであり、医学専門家の間では、健康被害は完全に無視し得るレベルであるというのが共通の認識である。実際には、プラズマディスプレイなどの大型テレビから出ている電界の方がはるかに大きなレベルであり、こうした大型ディスプレイがそばにあった場合、人体通信装置が使えなくなるケースがある。

3.期待される利用シーン

すでにいろいろな人体通信の応用例がテレビなどでも紹介されているが、その代表例の1つに「鍵の置き換え」がある。これは自動車、マイホーム、オフィスなどの各種扉の開閉に人体通信を利用するというもの。オフィスでは入退室管理に使うことができる。また自動車の場合、すでに無線通信によるキーレスエントリが実用化されているが、キーの閉じ込みやエンジン誤始動回避のため、車内に複数のアンテナを設置する必要があり、技術やコスト面で無駄が多い。人体通信を利用すれば電波を飛ばす必要がなくなり、アンテナ設置のコストを削減することが可能だ。さらに、キャッシュレス決済に人体通信を応用すると、たとえば、人体通信モジュールが組み込まれた携帯電話をポケットに入れたまま、認証・決済を行えるようになり、利便性が飛躍的に向上する。
 もちろん、携帯電話の拡張機能としてもいろいろな応用例が考えられる。たとえば、握手をしただけで、お互いのメールアドレスや名刺の交換、ビジネスデータの交換などが可能になったり、電車のつり革につかまるだけで、最新ニュースが配信されたりするといった具合だ(図4)。
 人体通信は、前述したように、大型ディスプレイのそばでは使えない可能性があるなど、従来の無線同様に通信周波数に障害をもたらす電磁波を受ける環境では使えないという利用上の制約はあるが、携帯通信、セキュリティ、自動車、事務機、健康医療、輸送、軍事など、広い分野から大きな期待がかけられている。
 今後の技術開発の課題としては、更なる機器の小型化(端末のJIS規格カード化)、カード化に伴う極超省電力化、人混みでの通信品質の確保などを挙げることができるが、すでに2009年の実用化に向け、リーディングカンパニー各社はすでに第4コーナーを周り始めている。

図4 人体通信の応用例

資料提供:カイザーテクノロジー

取材協力 :株式会社カイザーテクノロジー

掲載日:2009年3月25日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年7月2日掲載分

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