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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「バーチャルヒューマノイド」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「バーチャルヒューマノイド」。このテクノロジーを使えば、これまで映像で「見る」だけだった映画スターやフィクションのキャラクターと、仮想空間で「会う」ことができるかもしれません!

バーチャルヒューマノイドとは

バーチャル(virtual)もヒューマノイド(humanoid)も一般的な言葉だが、今回紹介するバーチャルヒューマノイドとは、コンピュータの作り出す「仮想現実」とロボットという「現実」をシンクロさせて、複合的な現実環境を実現するテクノロジーを指す固有名詞である。バーチャルヒューマノイドは、現在横浜国立大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーで同研究を継続中の庄司道彦氏が、当時所属していたNTTドコモのマルチメディア研究所で開発を始めたもので、2005年12月に開催されたNTTグループのイベント「コミュニケーションEXPO」で公開されて以降、注目を集めるようになった。さらに2006年の夏には、国際的なコンピュータグラフィックスの展覧会であるSIGGRAPHでもデモンストレーションを行い、好評を博した。

バーチャルヒューマノイドの見せる仮想現実
図1 バーチャルヒューマノイドとは

資料提供:NTTドコモ

バーチャルヒューマノイドのシステムは、クロマキー()合成用にグリーンの布で包まれたロボットと、カメラ付きのシースルー方式のヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」と表記)で構成される(図1)。このHMDは、左右の目の軸線上に2つのカメラを備えており、メガネを掛けたように、自分の前の景色をリアルタイムで写す。HMDを通した視界においてロボットは、CGで作られたキャラクターにクロマキー合成で置き換えられ、リアルな立体のCGキャラクターが目の前に立っているかのような体験をすることができる(図2)。

クロマキーとは、画像を合成するための輪郭情報を、特定の色の彩度(色の鮮やかさの値)から得る技術。ブルーやグリーンのスクリーンが多く用いられる。


HMDの位置や方向は、センサで検出されるので、体験者が歩いたり、頭を動かしたりした場合にも、映像とCGは追随して動く。CGキャラクターは、左右の目それぞれの位置に合わせて別々にリアルタイムレンダリングされるので、背景もCGキャラクターが合成された状態で立体視ができる。さらに、ロボットに触り、握手などの動きをすると、体験者の動きがロボットに伝わって、CGキャラクターも追随して動く(図3)。これまでディスプレイの中でしか見ることができなかったCGの人物と、現実と仮想が合成された空間で、インタラクティブなコミュニケーションを取ることができる技術。それがバーチャルヒューマノイドなのだ。

図2 ユーザの視野映像 図3 体験の様子

資料提供:NTTドコモ

資料提供:NTTドコモ

バーチャルヒューマノイドの仕組み

バーチャルヒューマノイドは、一見するとCGの動きに合わせてロボットが動く仕組みのように見えるが、実際はその逆である。ロボットがプログラミングされた動きを行い、同時に角度センサでロボットの各関節の状態を検出して、実際の状態をコンピュータに送り、その状態に合わせてCGを描画する仕組みとなっている(図4)。これにより、体験者がロボットに触れた際の姿勢の変化、腕などの位置の動きにCGキャラクターが追随するのだ。ロボットの制御は、サーボモーターの出力を抑えることで、人間が触っても安全かつ自然に姿勢を変動させることが可能になっている。

図4 動作の仕組みイメージ

資料提供:横浜国立大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

さらにHMDの位置と向いている方向を、体験者の頭上に設置した、レーザーで空間をスキャンするセンサで検出することにより、CGキャラクターをロボットの位置にリアルタイムでレンダリングして合成する。なお、3DCGレンダリングにはLinux上のOpenGLを用いている。

実装のカギは「現実的」なアプローチ

仮想現実の研究は世界各国で行われており、壺や衣服などの物体の柄をバーチャル空間で自由に変更するなどの技術も実装されている。しかし、ロボットをCGキャラクターに置き換えるバーチャルヒューマノイドについては、世界でもほとんど類例がない。これは、特定のキャラクターだけのために開発するのは製品として実用性が低いこと、複数のCGキャラクターを再生するプラットフォームとするには、ロボットとキャラクターの形状の差(太っている、痩せている、肩幅が広い、狭い、など)があるため、合成時のズレが原理的に避けられないこと、ロボットの周囲の照明環境とCGの照明の整合性など、数多くの技術的なハードルが背景になっている。

必ずしも王道にこだわらない解決方法

これらの問題について庄司氏は、キャラクターの周囲に「後光」を配置して発光しているイメージとすることで、光学的課題とキャラクターの体格差と幾何学的整合性の問題を回避している(図5)。力学的整合性については前述の通り、モーションの基本をCGではなくロボットとし、角度センサで検出した姿勢にCG側を追随させる方法で解決している。時間的整合性については原理的にタイムラグは避けがたいが、グラフィックボードとプロセッサの高速化にともなって、体感上問題ないレベルにまで遅延を抑えている。

図5 「後光」が射したキャラクター

資料提供:NTTドコモ

これらの課題の解決法は「技術的には王道のアプローチでなくても、現実に実装でき、かつ低コストな方法を常に考える」というコンセプトに基づいている。この開発姿勢は、「ロボットを商品として成り立たせるための条件」を考える中で生まれた「現実感を再生する『RealなPlayer』として、ロボットをコンテンツ再生のインターフェースとする」というアイデアに始まっている。

バーチャルだからできる表現を
図6 人物に漫画のような効果を付加

資料提供:資料提供:横浜国立大学
 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

リアルを追求するコンテンツは、時に威圧的と感じられることも多く、ユーザの「遊び」の部分が少なくなってしまうが、バーチャルヒューマノイドは、単にリアルな体験を実現するだけのシステムではない。漫画やアニメ、小説、映画などで「見る」ほかなかった表現を、現実そっくりの世界に引っ張り出してしまう、「現実よりおもしろい現実感覚」もバーチャルヒューマノイドが切り拓く可能性のひとつである。図6はそんなコンテンツのイメージをイラストで示したものだ。HMDで見る映像には、人物だけでなく背景のほうにもエフェクトをかけることができるので、リアルに見えている人物に漫画のような効果を付加することもできる。現実と仮想がないまぜになった中で、ユーザが思わず笑ってしまうような世界、それがバーチャルヒューマノイドの目指すものなのだ。

バーチャルヒューマノイドの将来性

庄司氏の提唱する「RealなPlayer」というビジョンは、ちょうど現在のDVDプレイヤーやゲーム機におけるディスプレイによる映像インターフェースを進化させ、インタラクティブ面も含めた「キャラクターの実体化」を行うインターフェースである。つまり映画俳優やスポーツ選手から、ゲームやアニメーションなどの架空のキャラクター、さらに家族や友人までを含む、あらゆる人やキャラクターとのリアルなコミュニケーションやインタラクションを実現するためのPlayerとしてバーチャルヒューマノイドは構想されている。


●コンテンツ配信の「庭」として

図7 コンテンツ配信の「庭」モデル

資料提供:資料提供:横浜国立大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

ゲームなどのインタラクティブなものから一方向のものまで、人物像とのリアルなインターフェースを提供するバーチャルヒューマノイドは、コンテンツ配信のプラットフォーム、「庭」として機能し、そのシステムをユーザにはハードウェア販売、コンテンツプロバイダにはライセンス提供するビジネスモデルが検討されている(図7)。コンシューマ向けのハードウェアを販売することを前提とするだけに、前述した「現実的」で低コストな研究開発思想が重要なのだ。


●目標は、初代システムを30万円で

図8 コタツトップのイメージ

資料提供:横浜国立大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

庄司氏が「コタツトップ」と仮称する製品化モデルは、シンプルで安価なロボットをテーブルの上に置いたイメージである(図8)。その価格は未定ではあるものの、「初代で30万円が目標」だという。ビデオデッキやDVDなどのコンテンツ流通メディアの普及の契機となった価格帯を考えても、妥当な線といえるのではないか。

製品化に向けた課題

すでにデモを行うところまで開発が進んでいるバーチャルヒューマノイドではあるが、製品化に向けての課題は決して少なくない。


●ハードウェア面の課題
 まず現在VGAにとどまっているヘッドマウントディスプレイの高解像度化、広視野角化、小型化、コストダウンは必須。現行では手動で行っている、キャラクターが喋る際のリップシンク(唇の動きと音声をシンクロさせる技術)も、多様なコンテンツ再生を可能とするためには、音声データやシナリオに合わせてリアルタイムで自動処理する必要がある。

●インタラクションに付随する問題
 さらに、ロボットは触れる、触れられるというインタラクションを担うデバイスとして、触った感触や握手などの動きを行った際の動きの抵抗感、重さ、力加減などが重要だが、これらの問題もまだまだ改善の余地がある。例えば「バーチャルヒューマノイドと腕相撲をすることができるか」という問いを考えるとき、ロボットの剛性、サーボモーターの出力制御と受ける力に対するフィードバック制御、ユーザの安全性、モーターへの負荷、発熱の問題、双方向化した際に顕著になるタイムラグにともなう力学系の発振・共振など、課題は枚挙にいとまがない。

●「不気味の谷」という課題
 また、1970年にロボット工学研究者、森政弘博士によって提唱された「不気味の谷」というヒューマノイド研究における有名な仮説も課題の1つだ。これは、ロボットや3DCGが「人間そっくり」に近づいていく際、人間と見分けのつかないレベルの手前に、好感度の深い谷間、つまり不快に感じてしまう領域がある、という考え方だ。ただし、この仮説は学術的に検証されてはいるわけではない。また、この問題について庄司氏は、3DCGグラフィックスの進歩でほぼ確実に乗り越えることができる、とみている。

まったく新しい現実体験を生み出す

図9 ユーザ体験の認知の仕組み

資料提供:横浜国立大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

現実には、当面バーチャルヒューマノイドと行うことのできるコミュニケーションは、簡単な握手程度に留まるだろう。しかし、ここにおいてロボットが担うのは単なるゲームのコントローラの役割だけではない。むしろ、視覚をヘッドマウントディスプレイで置き換え、リアルにキャラクターを三次元空間に描き出したのちに、それに触れることができる驚きと、それにともなってCGとロボットが融合して生まれる新しい感覚、認知の発生こそが、バーチャルヒューマノイドの画期的な点である。私たちの生活に全く新しい体験をもたらすテクノロジーとして、バーチャルヒューマノイドは、製品化の一歩手前で足踏みするロボットおよびVR産業に、新たな突破口を開く可能性を秘めている。

取材協力 : 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、横浜国立大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー バーチャルヒューマノイドプロジェクト

掲載日:2009年3月25日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2007年08月22日掲載分

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