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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
アノト機能ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化を早めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。
 今回のテーマは、アノト機能。ペンで紙に書いた情報が、そのままデジタルデータに変換できてしまいます。デジタルデバイドを克服してIT化をさらに進めるための鍵となる、画期的なヒューマンインタフェースです!

アノト機能とは?

1999年にスウェーデンで開発されたアノト機能は、ペンで紙に書いた文字やイラストが、スキャンなどの手順なしに、そのままデジタル化できる機能だ。アノトという名前は「メモを取る」という意味のラテン語「アノテーション」に由来する。
 現在、日本をはじめヨーロッパやアメリカなど世界30ヵ国以上で利用されている。医療や行政、教育などの広い分野で、さらなる応用が期待されている。

アノト機能の基本技術

アノト機能を実現するには、専用の紙とペンが必要となる。この2つのデバイスは、一見したところ普通の紙とボールペンとほとんど変わらず、全く同じように使用できるのだが、紙には特殊なパターンが印刷され、ペンにはカメラとメモリが内蔵されている。
 まず、紙のほうを見てみよう。アノト機能専用紙は、普通紙でできている。ややグレーがかったアノト機能専用紙の表面を拡大してみると、縦横0.3mm間隔に点が並ぶ特殊なドットパターン(=アノトパターン)が印刷されているのがわかる。
 アノトパターンは、0.3mm間隔の格子状の上に配置された縦横6×6ドットの計36ドットの組み合わせで構成されている(図1)。各ドットは、図のように直交する点から上下左右のいずれかの方向にごくわずかにずれている(図2)。36のドットがそれぞれ4通りの位置を持つため、4の36乗という、膨大な数のパターンを作ることができる。これだけのパターンを全て紙に印刷すると、約6,000万?もの面積になり、ヨーロッパとアジア大陸を合わせた面積に相当する。

図1 アノトパターンの一例 図2 直行する格子から4方向にドットがずれている

図1 アノトパターンの一例

図2 直行する格子から4方向にドットがずれている

この広大な平面のどの位置を取ってもパターンは全てユニークなため、どの紙のどの位置に書いたかという絶対位置の特定が可能となる(図3)。

図3 紙とペンの仕組み イメージ図

となると、膨大にあるとはいえ、限りのあるユニークなパターンが、紙を消費するうちにいつの日か尽きてしまわないかと気にかかる。しかしこの広大な紙面は、従来の記録紙の消費量から換算すると、約70年間は枯渇することはないという。
 次に、ペンのほうを詳しく見てみよう(表1参照)。アノト機能を搭載したデジタルペンには小型カメラが内蔵されており、文字を書く際に、1.8mm角の範囲のアノトパターン(先述の通り縦横6×6ドット=計36ドット)を1秒間に75枚という高速で撮影する。ペンが通過した用紙上の位置情報を刻々と捕捉していくことで、イメージスキャンしたような画像データとして筆跡を再現し、手書き情報のデジタル化を実現している。この時、書き順や書く速度、筆圧、ペンの傾き、書いた日時などもあわせて記録する(表2参照)。

表1 デジタルペンの主な構成要素DP-201 表2 デジタルペンが記憶すること
  • カメラ
  • イメージプロセッサ
    膨大な情報量(ペンの軌跡や書き順、スピード、筆圧など)を瞬時に認識
  • メモリ
  • 通信ユニットUSBおよびBlootooth
  • バッテリー
  • インクカートリッジ
  • 筆圧センサ
  • ペンの位置情報
  • ペンの軌跡(書き順)
  • 書く速さ
  • 筆圧
  • 書いた日時
  • ペンの傾き

最新機種のデジタルペン、日立マクセル製DP-201は、重さ30グラム、連続筆記時間2時間以上、搭載メモリ1MBで、A5用紙にして最大約40ページまで連続記録できる。USBもしくはBluetooth経由でデータ転送が可能だ。実際の使用感は、普通のボールペンとほとんど変わらない。

図4 日立マクセル製デジタルペンDP-201 図5 DP-201ペン先の断面

図4 日立マクセル製デジタルペンDP-201

図5 DP-201ペン先の断面

さらに、アノト機能のユニークな使い方として、紙に機能を割り当てることができる。様々なフォームをデザインし、各フォームにリンクしたアプリケーションを用意すれば、ペン先で特定の位置を指し示すことで、その機能を実行することができる。例えば、データの保存や送信などの機能を紙に割り当てておけば、その場にコンピュータがなくても、紙とペンだけでアプリケーションの実行ができる。

■アノトのビジネスモデル
 アノト社はスウェーデンに本社を置く企業で、デジタルペンとアノトパターンの技術をベースとしたライセンス提供ビジネスに特化している。実際の製品やサービス開発・製造及びエンドユーザーへの提供は、ペン製造、システムソリューション、印刷を受け持つパートナーやサービスプロバイダにより行われる。
 アノトパターンは、アノト社からパターンライセンスを供与され、印刷認定を受けた紙・印刷パートナーによってのみ印刷することができる。アノト社の適合認定を取得したプリンタも製品化されており、アノト機能に対応した紙の即時印刷も可能だ。

アノト機能を利用するメリット

基礎技術を理解したところで、アノト機能によって得られるメリットについて考えてみよう。アノト機能を導入することで、以下の3点が期待できる。

  • 手軽なインタフェースによるユーザビリティの向上
  • スキャナなしで手書き情報をすぐにデジタル化できることによる作業効率の向上
  • 情報セキュリティの向上

ユーザビリティの向上は、アノト機能の最大のメリットだろう。従来から、タブレットPCやPDAなど、ペンタブレットを使って手書き感覚でコンピュータに入力するデバイスはあった。しかし、書き味は実際のペンと紙とはかなり異なるため、長い文章を書くには不適当な上、手書きした紙を残すことはできない。ITに馴染みのないユーザーにとっては、作業によってはキーボードよりは使いやすいかもしれないが、けっして親切なインタフェースとはいえない。一方、アノト機能を利用すれば、ユーザーは紙とペンという慣れ親しんだデバイスのみで、デジタル入力していることを意識せずに利用できる。
 また、気候やスペースなどによりPCが使えない条件における作業の場合でも、紙とペンならば問題が少ない。これまでは、紙に手で記入した情報をデジタル化するデバイスとしては、スキャナやOCR装置があった。その場合、現場から戻った後、手書き情報をデジタル化するために再入力の必要があった。しかしアノト機能を使えば、その工程を経ずして、情報のデジタル保存・管理が可能となる。
 さらに、アノト機能の利用により、情報セキュリティの強化というもう一つのメリットも期待できる。デジタルペンは、書いた筆跡と同時に時刻も記録するため、情報がいつ書かれたものかを後から確認できる。つまり、もしデータの改ざんがあった場合は、後から書き加えられた部分を特定できるということだ。
 あるいは、大量の個人情報を扱う場合にもアノト機能は適している。ユーザーが帳票に自分の個人情報を記入すると、すぐにそのデータをデジタル化し、セキュリティ管理されたサーバに送信することができる。帳票そのものをその場で記入したユーザーに返してしまえば、個人情報を書類の形で残さないため、紛失や盗難のリスクを回避できる。
 また、デジタルペン内蔵のメモリに記録された筆跡データは暗号化されている。従って、万一ペンを紛失した場合でも、ペンから情報が流出することはまず考えられないという。

アノト機能はどこで使われているの?

これだけのメリットのあるアノト機能は、既に行政、教育、医療などの現場で導入され始めている。その例の一部を、分野ごとに見てみよう。

●行政分野

政府が電子政府の構築を推進していることを背景に、行政分野へのIT技術の導入が進んでいる。各種申請書の用紙にアノトパターンを印刷しておき、デジタルペンを用いれば、従来と同じようにユーザーが記入するだけで、OCRと連携したシステムにより即座にデータベースに登録される。利用者にこれまで以上の負担をかけることなしに、手書きデータを再入力する時間やコストが削減され、業務の効率化が望めるというわけだ。

●教育分野

教育分野では、塾や予備校のテストの採点にアノト機能が採用されている。アノトパターンを印刷した答案用紙を用い、デジタルペンで採点する。ペンが記録した採点結果はすぐにPCへ送信され、データベースに保存される。再入力の手間をかけずに、データを管理することができる。

●医療分野

医療分野でも、IT化が進み、カルテや検査結果がますます電子化されていく傾向にある。現状では、電子カルテの作成には主にキーボードやペンタブレットなどのインタフェースが使われている場合がほとんどだが、医師や検査技師によっては、こうしたツールを使いこなせていないケースも多いのが現状だ。しかし、アノトパターンを印刷したカルテにデジタルペンで記入すれば、従来と変わらない手書き作業だけで電子カルテの作成が可能だ。
 ヨーロッパでは、訪問介護の現場で使われている事例もある。介護レポートの用紙にアノトパターンを印刷しておき、介護スタッフが現場でデジタルペンを使って記入する。データはすぐに医療機関のデータベースに送信され、医療スタッフが情報を共有できる他、職場にいる家族も、携帯電話や電子メールに送られてくる介護レポートを確認することができる。この時、デジタルペンが記録したレポートが書かれた時間と、レポートに記入された時間が合っているかを確認できるため、虚偽の報告を防ぐことができる。適切な介護が実際に行われたことがわかり、介護の時に不在にしていても安心できる。
 また、複雑なデバイスが必要ないため、現場で介護にあたる多くのスタッフに、レポートの書き方を指導する時間も短縮できる。手書きレポートをデジタル化するコストも省けるため、結果として大幅なコスト削減を実現できたという。

将来的な利用イメージ

これまで見てきたように、ペンと紙というシンプルなインタフェースで実現するアノト機能は、多くのメリットがあり、既に様々な分野で実用化されている。しかし、残念ながらデファクトスタンダードとなるところまでにはまだ至っていない。より利用範囲を拡大していくために、様々な利用シーンを想定しての試作品や実証実験が現在も繰り返されている。
 中でも、特に社会的に有用な応用例として、災害医療へのアノト機能の適用がある。地震のような大規模な災害の時に、一時に集中して負傷者が大量に発生することがある。一人でも多くの人命を救うため、緊急度や重傷度に応じて、その現場で治療や搬送に優先順位を付けるプロセスを「トリアージ」という。この際、「トリアージタグ」と呼ばれる3枚綴りの識別票が欠かせない。現場では、負傷者の氏名や住所、緊急度・重傷度などをこのタグに記入し、負傷者の手足にゴムで付けておく。
 このトリアージタグに、アノトパターンを印刷した紙を用い、デジタルペンで記入すれば、すぐに情報のデジタル化が可能となる。さらに携帯電話やWebページと連携させた「負傷者トレーサビリティ・システム」が、現在、実証実験中だ。迅速な被害状況の把握や、各医療機関の情報共有、家族や知人の正確な安否情報の確認に活用できるため、まだ克服すべき課題はあるものの、実用化が期待されている。
 もっと身近なシーンでも、アノト機能のニーズがあるだろう。現在は主にエンタープライズ向けにビジネスソリューションが提供されているが、今後コンシューマ向けにもソリューションが展開されていく模様だ。
 コンシューマ向けソリューションの例として携帯電話で手書きのメッセージをメール送信できるものがある。アノトパターンの印刷された紙にメッセージを書くと、手書きイメージをそのままBluetoothを搭載した携帯電話に転送し、メールとして送信することができる。

社会全体のIT化が進んでも、紙にペンで書くという原始的な記録方法は、おそらく今後も廃れることはないだろう。この自然な行為に近いヒューマンなユーザーインタフェースを実現するアノト機能が、どこまで適用されるのか、大いに期待したい。

取材協力 :アノト日本株式会社、日立マクセル株式会社

掲載日:2009年3月25日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2006年8月2日掲載分

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