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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「きずな」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回取り上げるのは、物体「K」、すなわち超高速インターネット衛星「きずな」。地上にネットワークを張り巡らすことなく、山間部でも離島でも、どこからでも手軽にブロードバンド回線を手に入れられる時代がやってきます!

1.「きずな」とは

「きずな」とは、政府IT戦略本部の「e-Japan重点計画」に基づき、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と情報通信研究機構(NICT)が共同開発した超高速インターネット衛星「WINDS」の愛称のこと。この愛称はWINDSおよびWINDSミッションの内容に対する興味、関心を高め、宇宙開発に係る理解増進を図ることを目的として、一般公募の中から選定された。
 「きずな」は平成20年2月23日17時55分(日本標準時)、種子島宇宙センターからH-IIAロケット14号機に搭載され無事に打ち上げられた。現在、東経約143度、高度約3万6000kmの円軌道を毎秒約3kmの速度で周回している。この軌道は地球の自転と同じ速度で同じ方向に飛ぶ軌道であり、地球から見ると止まっているように見えることから、これを静止軌道という。

1-1 世界最高速の「1.2Gbps」衛星通信技術の開発

図1に「きずな」の概要を示す。質量は約2.7t(静止軌道上初期)、長さは21.5m(太陽電池パドル展開時)、発生電力は5200W以上、寿命は打ち上げ後5年(目標)だ。商用衛星の寿命は一般的に10年〜15年で、軌道修正のための燃料切れ、バッテリ寿命、衛星表面の劣化などで寿命が尽きる。「きずな」は技術試験衛星なので、5年で設計されている。

図1 「きずな」の概要

資料提供:宇宙航空研究開発機構


「きずな」のおもな特長は次の3つだ。

■その1:小型の地上端末でも高速通信が可能!

「きずな」ではKa帯という約20GHzから30GHzの高い周波数の電波を使用して通信を行うため、最大で1.2Gbpsという超高速のデータ通信を行うことができる。また、直径45 cmの小さなアンテナでも155Mbpsの受信速度が実現できる。現在運用されている衛星インターネットサービスは、代表的なものでJSAT(日本)が最大上り2Mbps/下り10Mbps、Wildblue(米国)が最大上り256kbps/下り1.5Mbps。「きずな」が実現するデータ通信は、圧倒的に速いといえるだろう。
 図1に示すように、「きずな」には2つのマルチビームアンテナが搭載されていて、1つは、日本国内を9つのビームで分割して覆い、同時にソウル、北京、上海をカバーし、もう1つは東南アジア7地域向けの送受信を担当している。2つのアンテナで複数のビームを送受信させるためにいくつかの工夫が施されており、複数の反射鏡を精密に組み合わせたり、電波同士の干渉を防ぐために垂直偏波と水平偏波を交互に組み合わせたりしている。
 JAXAとNICTでは、平成20年3月28日から4月7日にかけて共同で「きずな」の初期機能確認作業を実施したが、その結果、超小型地球局(アンテナ直径45cm)と高速小型地球局(アンテナ直径1.2m)との間で155MbpsでのIP通信が正常に行われたことを確認した。衛星から45cm直径アンテナの超小型地球局に対する155Mbpsという伝送速度は世界最高速。
 また、5月2日には、アンテナ径2.4m相当の車載型の超高速小型地球局との間で、世界最高速度となる1.2Gbpsでの超高速データ通信にも成功している。

■その2:降雨時でも安定した通信を維持できる!

「きずな」が使用しているKa帯は高速通信に最適だが、その一方、この周波数帯は雨に弱く、雨天時には電波が減衰してしまいうまく通信できないという課題を抱えている。電波を強くすれば解決するが、人工衛星の電力は太陽電池パドルによって作られているため、強力な電波を送り続けて電力を使いきるわけにもいかない。そこで、「きずな」では送信ビームの出力を自在に増幅できるマルチポートアンプが新たに開発・搭載された。これにより、雨の降っている地域にはピンポイントで強力な電波を送信し、晴れている地域には弱い電波を送って消費電力を抑えることができるようになり、つねに安定した状態で超高速通信を行うことができるようになった(図2)。

図2 マルチポートアンプの採用

資料提供:宇宙航空研究開発機構


■その3:地球のほぼ3分の1という広大な範囲をカバーできる

「きずな」には、電波の方向が固定されたマルチビームアンテナ2台のほか、新開発のアクティブフェーズドアレイアンテナ(APAA)という送信アンテナと受信アンテナも搭載されている(図3)。このアンテナは、ある瞬間にハワイ、そして次の瞬間にはオセアニアというように、2ミリ秒間隔という高速で、電波の方向を自在に制御することによって、マルチビームアンテナがカバーしていない地域での通信を可能にする。このアクティブフェーズドアレイアンテナと2台のマルチビームアンテナによって、「きずな」は、その静止軌道から見える地球の約3分の1の範囲における通信を実現している。

図3 アクティブフェーズドアレイアンテナ

資料提供:宇宙航空研究開発機構


2.「きずな」への期待と利用シーン

インターネットは世界中で急速に普及しているが、すべての人々が同じようにインターネットを利用できるわけではないのが現状だ。アジア周辺諸国はもちろん、日本国内でさえも、インターネットが行き届かない地域はまだまだ沢山存在する。たとえば、都市から遠く離れた山間部や離島では1回線あたりの整備コストが高くなることから、地上だけでネットワークを整備するのは難しい。このような場合、「きずな」なら大掛かりな地上制御局なしで、CS放送アンテナとほぼ同じ大きさ(直径45cm程度)のアンテナを設置するだけで高速通信が可能になる。インターネットが急速に普及し、社会的なインフラとなりつつある現在、高速なブロードバンドが簡単に利用できる都市部と、インターネットが利用できない、あるいはナローバンドしか利用できない地域とのデジタルデバイドが問題になっている。「きずな」は技術試験を目的とした衛星なので一般利用は予定されていないが、「きずな」の技術はそういった問題の解決にも役立つだろう。
 また、「きずな」が提供する大容量・超高速データ通信を利用すれば、遠く離れた都市の専門医師に、患者の状況をハイビジョンレベルの鮮明な画像で正確に伝えることができることから「遠隔医療」にも役立てることができる。
 さらに、Eラーニングなどの教育分野でも「きずな」は注目を集めている。「きずな」では、広い範囲に散らばる数ヵ所の端末を直接つないで同時に通信することが可能で、ストレスのないコミュニケーションや快適なEラーニングを実現できる。
 このほか、 突然襲ってくる自然災害発生時には、被災地の状況を正確に把握することが重要だ。日本やアジア諸国で、万一、災害によって地上のネットワークが寸断されても、「きずな」があれば、小型アンテナを設置するだけで迅速にブロードバンド回線を確保できるので、被災地と対策本部を結ぶ太いパイプラインとしても期待できる。

3.「きずな」の今後

「きずな」の利用にあたっては、JAXAとNICTによる基本実験が平成20年7月から、総務省により公募・採択された利用実験が平成20年10月から、それぞれ実施される。利用実験には国内外から53件の応募があり、衛星アプリケーション実験推進会議における審議の結果、すべての提案が採択された。利用実験の分野別件数は、教育分野が18件、伝搬分野が14件、防災分野が8件、医療分野が6件。これらの実験により、平成21年末ごろまでには超高速固定衛星通信ネットワークの実証にメドが立つことになるはずだ。
 一方、すでに民間企業の間では、2003年、「きずな」の技術成果を活用することにより低価格なサービス料金で、地上光ファイバなみの高速/大容量インターネットサービスを目指す「株式会社超高速衛星インターネットサービス企画」が設立されている。同社では、個人向けブロードバンドインターネットサービス、自治体情報提供、遠隔医療、遠隔教育などの公共向けイントラネットサービス、企業向け大容量コンテンツマルチキャストサービスなどを検討している。
 ただし、こうした企業が商用サービスを開始するには、「きずな」と同様の機能を持った商用衛星を別途自前で打ち上げる必要がある。ちなみに「きずな」の場合、衛星開発費に317億円、打ち上げ費に110億円かかった。従って、一般ユーザーが衛星による超高速通信を利用できるようになるまでにはまだ数年はかかるだろう。

取材協力 :宇宙航空研究開発機構

掲載日:2009年3月18日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年6月4日掲載分

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