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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
エバネセント通信ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化を速めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「エバネセント通信」。障害物の影響を受けず、しかも外に電波が漏れない理想的な屋内無線LANを実現できます!

エバネセント通信とは

エバネセント通信とは、エバネセント電磁界を利用して、鉄骨/鉄筋でできた建物や自動車/飛行機などの導電性構造物の中で行う通信のことだ。エバネセント(evanescent)を直訳すると、「次第に消えてゆく」「つかの間の」「はかない」という意味になるが、ここでいうエバネセント電磁界とは、電波が伝わらない遮断された状況で発生する特別な電界のことを指す。例えば、6面をすべて導体で囲まれた空間では、あるサイズ(使用する電波の半波長)以下になると電波が伝わらない遮断現象が起こり、電磁波はその姿を波から伝わらない電磁エネルギーに変える。これがエバネセント電磁界またはエバネセント場と呼ばれるもので、壁から離れるに従って急激に減衰するので、いわゆる波として遠くへ伝わることはない(図1)。
 エバネセント電磁界は、電磁気学の基礎を築いたイギリスの物理学者マクスウェルが考え出した理論(マクスウェルの方程式と呼ばれるもので、光が電磁波であることを導いた)により、その存在は以前から理論の上では明らかにされていたが、通信に利用できるとは思われていなかった。

図1 エバネセントとは

資料提供:ココモ・エムビー・コミュニケーションズ

【エバネセント通信の特長】

エバネセント電磁界を通信に利用しようという発想は、GHz帯だけでなくMHz帯の周波数帯域も屋内通信に使えないだろうかという研究から生まれた。最初にエバネセント通信の実験に成功したのは1998年、米国でのことだったが、現在では、エバネセント通信に関する技術特許は日本のココモ・エムビー・コミュニケーションズ社が所有している。同社では、2003年にエバネセント通信の実験局免許状を総務省から取得し、2005年にはPCカードタイプのエバネセント通信機器を開発した。その後、2005年9月より社団法人「電波産業会」において技術に関する調査検討会が行われていたが2006年3月に終了し、エバネセント通信の使用基準を含む報告書が提出された。
 エバネセント通信では、壁面、天井、床の金属体の表面に高周波電流を流し、壁面、天井、床と子機との間で、直接エバネセント電磁界をやりとりすることで通信を実現する。エバネセント電磁界は非伝搬性の電磁エネルギーであることから、屋外に漏れることはほとんどなく、人や障害物で通信が遮断されることもない。さらに出力が微弱で使用する周波数も低いので(MHz帯)、人体に対する影響もなく、他の電波を使った通信システムと干渉を起こす可能性も低い(図2参照)。

図2 エバネセント通信空間の特長

資料提供:ココモ・エムビー・コミュニケーションズ

エバネセント通信の仕組み

それでは、エバネセント通信ではどうやって壁面、天井、床の金属体の表面に高周波電流を流しているのだろうか。従来、高周波電流を流す方法として「静電結合」「電磁結合」「電磁波結合」という3つの方法が使われてきた。静電結合は電子部品のコンデンサで応用されている技術、電磁結合は同じく電子部品のトランスで応用されている技術、電磁波結合はテレビや携帯電話のアンテナで応用されている技術のことだ。しかし、これらの方法では、構造物の表面に広帯域の高周波電流を流すことができない。そこで、エバネセント通信実現のために考案されたのが「エキサイタ結合」という新しい技術だ。
 開発されたエキサイタには図3、図4に示すように額縁などに入れて使用できる2Dエキサイタと、工場などの大空間で使うための3Dエキサイタがあり、エキサイタを壁に接触させて建物の鉄骨などに送信データを載せた高周波電流を直接流し込む仕組みになっている。つまり、「送信機(子機)→鉄骨→エキサイタ(親機)で増幅→鉄骨→受信機(子機)」という順番で信号が伝わっていく仕組みになっている。実際の通信実験では、35MHz帯を使って20〜24Mbpsの高速データ通信に成功している(図5参照)。

図3 2Dエキサイタ 図4 3Dエキサイタ

(クリックすると大きな画像が表示されます。)

図5 エバネセント通信と従来の短波帯通信の違い

資料提供:ココモ・エムビー・コミュニケーションズ

■エバネセント通信に対する疑問に答えます!
 ココモ・エムビー・コミュニケーションズ社がエバネセント通信技術を発表した際、各方面から次のような質問が寄せられた。これに対し、同社では以下のように回答している。
疑問1: エバネセント通信とはエバネセント電磁界だけを利用した通信なのか?
回答1: エバネセント通信はエバネセント電磁界だけを利用するものではない。エバネセント通信ではMHz帯(短波帯)の通常の電波も利用している。ただし、その出力は微弱で波長も長いことから屋外に電波が漏れる心配はない。
疑問2: 従来のアンテナ間通信を遮蔽空間通信に応用しただけなら新しい通信技術とはいえないのでは?
回答2: エバネセント通信の特質は、従来の無線通信のように遠くのアンテナ同士で通信を行うのではなく、近くの導電性構造物を使って通信を行うことにあり、従来の遮蔽空間通信とは大きく異なっている。エバネセント電磁界は非伝搬性であるが、その発生源の近くでは通信に十分耐えられるだけの電界強度が生成されている。

エバネセント通信の利用イメージ

エバネセント通信は屋内での高速LANを実現するための技術で、コンピュータ、携帯電話、PDA、電話、テレビ、ラジオ、セキュリティ機器、照明、暖房や冷房システム、その他多くの機器をエバネセント通信によって作り出される電磁場内でワイヤレス接続することができる。例えば、応用分野として以下を挙げることができる。

<エバネセント通信の応用分野>
  • デジタル家電の双方向通信や家電ネットワーク
  • 次世代型の携帯電話万能端末
  • 各種インフラ設備への適用(発電設備の監視制御、河川・水環境管理、道路交通管制など)
  • 低コストで手間のかからない旧ビルでの無線LANネットワークの構築
  • 自動車の車内LAN(カーナビゲーション、車載サーバによるコンテンツの提供など)
  • 音楽、ゲーム、医療、教育など

具体的な利用イメージとして、展示会ブースのインフラを整備したい場合、まずアルミ材で囲むようにしてブースを組み立てて、その中に通信したい機器とエキサイタを設置すればよい。これだけで、ブースの中だけの高速ワイヤレスLANを構築でき、隣のブースに情報が漏れたり混信したりすることもなくセキュリティ対策も万全だ。このように、エバネセント通信は最後の1インチと言われる屋内生活空間において、他の通信技術に比べて、より安く、より性能良く、インターネットを広げる可能性を秘めた技術といえる。

取材協力 :株式会社ココモ・エムビー・コミュニケーションズ

掲載日:2009年3月18日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2006年6月7日掲載分

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