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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
有機ラジカル電池ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化を速めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「有機ラジカル電池」。デスクトップPCもノートPC同様、電池でバックアップできる時代がやってきます!

有機ラジカル電池とは

有機ラジカル電池とは、ラジカルと呼ばれるプラスチック材料に電気を蓄積する電池のことで、2000年にNECから初めて提案された。「なんだ、提案されてからもう5年も経っているじゃないか」と、秒進分歩のIT業界人からは非難の声があがるかも知れない。しかしなぜ今、有機ラジカル電池なのか、ぜひ読み進んでほしい。有機ラジカル電池は着々と実用化に向けた研究が進んでいる、次のような特長を持つ次世代二次電池(充電して繰り返し使える電池)なのだ。

  • 他の電池と比べて10倍の高出力
  • 1000回の充放電を行っても90%以上の容量を維持できる
  • カドミウムや鉛などの重金属を利用しない(環境にやさしい)

【デスクトップPCのバックアップ電源に使えます】

電池は日常生活の中で非常に身近な存在だが、特長を列挙しただけでは「これはスゴイ!」と驚嘆してもらうことは難しい。そこで、有機ラジカル電池が電池の世界でどのような位置づけにあるのか、まずそこから説明しよう。
 電池といえば、懐中電灯などに使う単一、単二…といったアルカリ乾電池や、携帯電話などに使うリチウムイオン電池などがあるが、充電できずに1回使用しただけで廃棄されるアルカリ乾電池やオキシライド乾電池は「一次電池」、充電して繰り返し使えるリチウムイオン電池などは「二次電池」と呼ばれている。現在、最も多く生産されている電池はリチウムイオン電池で、そのおもな用途は携帯電話やノートパソコンの電源だ。しかし、従来の二次電池はエネルギー密度が理論的な限界に近づいていて、高容量を実現する新しい二次電池の開発が求められている(図2参照)。
 そこでNECでは2005年8月、同社のデスクトップPC(Pentium4搭載、最大消費電力228W、平均96W)に今回新しく開発した有機ラジカル電池(35W)を4個直列に内蔵して(140W、サイズは5.5×4.5×1.6cm、総重量は88g)実証試験を行った。この試験の結果PCに供給されるAC電源が停止すると、電源異常を自動感知して有機ラジカル電池の電力供給に切り替わり、作業中のデータをハードディスクにバックアップできることが確認された。つまり今後、小型化や低価格化を実現しやすく、しかも環境にやさしい有機ラジカル電池の製品化が実現すれば、わざわざUPS(無停止電源)を導入しなくても、あらゆるIT機器の電力バックアップ対策が可能になるのだ。

図2 有機ラジカル電池の位置づけ

資料提供:日本電気

有機ラジカル電池の開発経緯

それでは、一体どのような経緯で有機ラジカル電池の開発は進められてきたのだろうか。NECでは、従来から導電性高分子(半導体程度に導電率が増大する高分子)の研究を続けてきたが、1994年に導電性高分子を使ったタンタル固体電解コンデンサの製品化に成功した。その延長として、1996年頃から電池分野の研究も開始し、その後、2000年にフィルム外装を用いた薄型軽量のラミネート電池を製品化した。さらに、より小型軽量の新しい電池の製品化を目指して、有機化学反応を利用した有機電池の開発に着手したのが有機ラジカル電池である。具体的には、1999年に新入社員が提案した研究テーマをきっかけとして誕生したもので、ラジカルの酸化還元を二次電池の充放電へ応用するという新しいアイデアを実現したものである。

【有機ラジカル電池の仕組み】

有機ラジカル電池の構造を紹介しよう。まずは改めてラジカルについて説明しよう。これは化学結合していない不対電子(対になるもう1つの電子が欠けている電子)のことで、通常は反応性が高く化学反応の途中で一時的に現れたりする。ラジカルは本来、蓄電材料としては不適格だが、中には安定性があって高速に反応する蓄電材料に適した安定ラジカルもある。そこで、有機ラジカル電池ではこのような安定ラジカル化合物を正極に採用し、ラジカルの酸化反応と還元反応を利用して充電と放電を行っている。
 なお、正極の製造工程はリチウムイオン電池と同じで、負極には金属リチウムや黒鉛を利用できることから、既存のリチウムイオン電池の製造設備を利用することができ、低コストで製造可能だ。
 有機ラジカル電池に蓄積できる電気の量(容量密度)は電極活物質に含まれる安定ラジカルの濃度に依存する。現在、デスクトップPCなどのバックアップ用電源として同社が開発中の有機ラジカル電池で使われている安定ラジカル化合物はPTMA(ラジカルを高分子鎖に結合させたプラスチック材料の1つ)で、その容量密度(単位体積当たりに蓄えられる電荷量)は111Ah/kgで、リチウムイオン電池の170Ah/kgに比べると小さい。しかし、理論容量136Ah/kgを実現するPTVEと呼ばれる安定ラジカル化合物もすでに開発されていて、さらなる新材料の開発が進められている。

利用イメージ

有機ラジカル電池は、まだ研究開発の段階なので、NECから具体的な事業化計画の発表はないが、現在同社が開発を進めているものとして、PTMAに特殊な化学処理を行って耐久性を高めた高出力の有機ラジカル電池がある。さらに、POS端末バックアップ電源システムの開発などにも取り組んでいる。今後、家庭内のインターネットバンキングやオンラインショッピング、各種チケットのオンライン予約などが急増することが予測されるが、停電などの電源トラブルでデータ損失する事態は絶対に回避したい。UPSがなくても安心してデスクトップPCを利用できる環境を手軽に実現できる有機ラジカル電池は、こうしたホーム市場ニーズにも見事に合致する。
 最後にひとつ課題を挙げるとすれば、二次電池のメーカー間における互換性問題。特に、電池をパソコン本体に内蔵させる場合、コンパクト化、デザイン性などに各メーカーの独自ノウハウが沢山詰まっているので互換性がない。携帯電話用やパソコン用の電池の国際化規格についてもあまり進んでいないのが現状。一般ユーザーにとっては乾電池のように二次電池の規格化も進んでくれると大変有難い。

取材協力 :日本電気株式会社

掲載日:2009年3月11日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2006年2月15日掲載分

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