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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「360度立体映像ディスプレイ」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「360度立体映像ディスプレイ」。意外にもごくシンプルな仕掛けで、「スター・ウォーズ」に出てくるような立体映像通信が家庭のパソコンで実現できるようになります!

1.360度立体映像ディスプレイとは

360度立体映像ディスプレイとは、360度好きな角度から1つの立体映像を見ることができるディスプレイのこと。つまり、このディスプレイの周りを取り囲みながら、同時に何人もの人たちが1つの立体映像を見ることができる装置なのだ。これまでにも360度立体映像ディスプレイは世界中で開発・製品化されてきたが、従来の装置の大半は大型で持ち運びが難しいという問題を抱えていた。しかし、今回取り上げる日立の基礎研究所が開発した360度立体映像ディスプレイ技術は、液晶ディスプレイの画面上に鏡を置いたきわめてシンプルな機構で、小型・軽量で持ち運びが可能である。また、視聴者は特殊な眼鏡を着用する必要がなく、ホログラム映像のように特殊な演算処理もまったく不要で、コンピュータグラフィクスから実写映像まで、静止画、動画ともにリアルタイムによるフルカラー表示が可能だ。

1-1 360度立体映像ディスプレイの仕組み

今回、日立製作所が開発した360度立体映像ディスプレイの仕組みと表示例を図1、図2に紹介しよう。この装置は、上向きに置いた液晶ディスプレイの画面上に多角錐形の鏡を逆さまに設置した構造になっている。この液晶ディスプレイに、複数方向から写した被写体の映像を環状に並べた合成画像を表示すると、その映像は画面上に置かれた多角錐形の鏡に映り込む仕掛けになっている。このとき、鏡像の原理を利用して、ちょうど視聴者の目の前、多角錘の中心軸上に映像が表示されるように鏡(ハーフミラー)が45度の傾きで配置設計されている。また、複数方向からの映像が重複して写りこまないように、各ハーフミラーの間には仕切り(フィン)も設置されている。この結果、視聴者が鏡を見ると、まるでそこに物体があるかのように立体映像を見ることができるのである。従って、ディスプレイの周りを視聴者が移動することで、写し出された立体映像を自分の好きな方向から自由に見ることができる。
 今回は、12型の液晶ディスプレイを用いて、12方向からの映像を映し出せる装置が試作されたが、この装置を使うと幅約2cm、高さ約4cmの立体映像を360度回り込んで見ることができる。ディスプレイ装置のサイズは幅20cm×奥行き20cm×高さ10cmで、重量は約1kg、持ち運んで利用することが十分可能である。
 また、立体映像の表示サイズは、液晶ディスプレイのサイズに応じて変更することが可能で、現在の倍のサイズを表示したいときにはディスプレイサイズを約2倍にすればよい。なお、今回の試作機は12面だが、たとえば24面にすることで、さらにきめ細かい立体映像にすることができる

図1 360度立体映像ディスプレイの構造 図2 表示例

資料提供:日立製作所

資料提供:日立製作所


2.開発の経緯

空間に浮かび上がるような立体映像を表現する手段としては、ホログラフィが広く知られているが、ホログラフィでは、立体映像を再生するための干渉縞(ホログラム)を作成するためのプロセスとして、膨大な計算が必要になることから、スーパーコンピュータを駆使したとしても立体映像のリアルタイム表示はほとんど不可能である。
 そこで日立製作所では、実写の立体映像をリアルタイムに表示できる装置の開発に着手し、2004年に、360度どこからでも見ることができる立体映像ディスプレイ「Transpost(トランスポスト)」の開発に成功した。この装置は、複数方向から映した被写体の映像を、特殊処理を施した回転スクリーンに同時に投影して、立体的な映像を表示するという仕組みになっている。試作機では24方向から撮影した被写体の映像を、まず台座に組み込んだ液晶プロジェクタによって天板の鏡に投影する。そして、天板の鏡で反射された映像が回転スクリーンの周りに配置された24枚の鏡に投影され、さらに、この鏡で反射された映像が回転スクリーンに投影される。同社では、この装置と同時に、被写体を24方向から見たときの映像を自動生成できる専用撮影システムも開発した。このシステムで撮影した映像を直接、液晶プロジェクタに送信すれば、リアルタイムで立体映像を表示することができ、さらに、撮影システムとTranspostをネットワークで結ぶことで、実写の立体映像を遠隔地にリアルタイム送信することも可能になった。
 ただし、このとき開発されたTranspostは、広い会場に据え置きで利用することを前提に開発された大型装置であり、立体映像を表示するために回転機構を利用していることや、設置する際に装置の光学的調整が必要であることから、この構造のままでは持ち運びタイプを実現するのは困難であった。
 一方、立体映像は、今後、日常的な業務や教育現場などの身近なシーンで気軽に利用される機会が増えていくものと予想されるため、持ち運びができるように、ディスプレイ装置の小型化を進める必要が出てきた。そこで、同社では回転機構を使用しない、よりシンプルな機構の装置開発に着手し、その結果、今回の技術開発にたどり着いたのである。
 今回の360度立体映像ディスプレイの映像表示に用いる合成映像は、2004年に同社が開発したTranspostと同様であるため、すでに開発済みの専用撮影システムを併用することによって、リアルタイムで立体映像通信を行うことが可能である。

3.360度立体映像ディスプレイの主な用途

立体映像の代表例として「スター・ウォーズ」のワンシーンを挙げることができる。1977年に公開されたこの映画の第1作目には、R2-D2ロボットがホログラムを使ってあたかも本人が目の前にいるかのごとく、空間上にレイア姫を映し出すシーンがあった。このシーンを実現してみたいとの思いが、その後の360度立体映像ディスプレイや立体視ディスプレイを開発する原動力の1つになったと言う。「スター・ウォーズ」シリーズのその後の続編ではホログラムを使って立体映像通信を行うシーンも登場してくるが、現在のホログラム技術では、リアルタイムで立体映像通信を行うことは難しい。
 これに対し、今回紹介した360度立体映像ディスプレイ技術では、立体映像を作り出すための膨大な計算は必要ないため、SF映画の世界に登場するような、空中に人物や物体の立体映像を投影するシーンを簡単にリアルタイムで実現することができる。
 また、これまでの立体映像技術の用途は、特別な展示やエンターテイメント分野に限られていたが、小型・軽量化を実現した360度立体映像ディスプレイなら、もっと身近なところで気軽に利用できる。たとえばビジネス分野では、顧客先で商品デザインを立体映像で紹介したり、デザイン室で開発された試作品の立体映像を、複数の拠点で同時に見ながら、商品設計の議論を展開したりすることができる。一方、教育分野でも、たとえば学校授業の一環として、博物館や美術館などの展示物を立体映像によって観賞したりすることができる。さらに、撮影システムと併用することによって、収集品の立体映像データベースを構築することも可能だ。このように、アイデア次第でその活用範囲は限りなく広がっていくが、やはり人間を対象にした「立体映像電話」が一番わくわくするかも知れない。

取材協力 :株式会社日立製作所

掲載日:2009年3月 4日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年3月5日掲載分

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