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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「超電導スイッチ」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「超電導スイッチ」。半導体技術の限界を打ち破る100Tbps超高速ハイエンドルータの実用化が見えてきました!

1.超電導スイッチとは

超電導スイッチとは、超電導デバイスを使って実現されたネットワークルータ用スイッチのこと。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の委託により、財団法人国際超電導産業技術研究センターが実施した「低消費電力型超電導ネットワークデバイスの開発」プロジェクトで開発に成功した次世代ルータ用スイッチである。

図1 超電導スイッチの外観

資料提供:国際超電導産業技術研究センター

中央の赤い部分の中に超電導チップが入っている

 超電導デバイスでネットワーク通信機器を作れば、従来の半導体デバイスで作るよりも、1000分の1の超低消費電力で、100倍の高速動作が可能なルータやスイッチを実現できることは従来から知られていた。しかし、超電導デバイスが動作する極低温(マイナス269℃)環境を作るためには、取扱いの難しい液体ヘリウムが必要であったり、室温から極低温への高速アクセスが困難であったりすることから、これまでは研究者しか、超電導デバイスを取り扱うことができなかった。

 そこで同プロジェクトでは、一般ユーザも使用できる超電導スイッチの開発に取り組んだ結果、室温からの高速電気信号線を実装した超電導スイッチと、取り扱いが容易な冷凍機とを、標準の19 インチラックに組み込むことに成功したのである(図1)。

高速ネットワークで使用されるハイエンドルータは、一般にパケットの前処理を行うラインカードと呼ばれる部分と、アドレスに従いパケットを交換するスイッチと呼ばれる部分から構成されている。ラインカードは複雑な処理を行うが、1ポートからのパケットを1つのラインカードで処理することができるので、今後も従来の半導体技術で十分対応できる。しかし、スイッチのほうはすべてのラインカードからのパケットが集中するため、ハードウェア的に高い処理能力が要求される。そこで、今回の開発では図2に示すように、ラインカード部に半導体、スイッチ部分に超電導デバイス(SFQ:後述)を採用することで、半導体と超電導によるハイブリッドルータが実用レベルの段階に達していることを示したのである。

図2 SFQ/CMOSハイブリッドルータ

資料提供:国際超電導産業技術研究センター

超低消費電力ハイエンドルータを実現できることを実証

同プロジェクトでは、今回開発に成功した超電導スイッチに4台のパソコンをLAN接続して、イーサフレームによる画像転送実験を実施した。その結果、1台のパソコンから同時に複数のパソコンに対して画像転送要求を出した場合でも、超電導スイッチの制御機能により正常に画像が送られることが確認された。ここで使われている超電導スイッチは、ネットワークルータの内部で同じ行き先のパケット同士が衝突しないようにデータの振り分け処理をするスイッチスケジューラ付きの4入力・4出力スイッチである。10Gbpsのデジタル信号が伝送される入出力ポートを10Gbps信号で切り換える仕組みになっている。また、入出力を40Gbpsにスピードアップしても動作する見通しも得られており、この場合のスイッチのスループットは160Gbpsとなり、全二重通信では320Gbpsという、キャリア向けのハイエンドルータに相当する。このような大容量スイッチであってもデータパスとスケジューラを合わせた消費電力は僅か0.7mWで済む。

2.超電導のおさらい

図3 超電導単一磁束量子(SFQ)回路

資料提供:国際超電導産業技術研究センター

ここで、超電導に関する基礎知識をおさらいしておこう。超電導体と呼ばれる物質は、臨界温度と呼ばれる温度以下になると直流電気抵抗がゼロになり、内部から磁場を排除する現象が起こるが、この一連の現象のことを「超電導」と呼ぶ。超電導体には、マイナス269℃(絶対温度4°K)付近で動作する低温超電導体と、マイナス243℃(絶対温度30°K)以上で動作する酸化物系の高温超電導体とがある。低温超電導体の材料としては通常ニオブ(Nb)という金属が用いられる。ニオブは取り扱いが容易で、集積度の高い回路を組むのに適している。
 こうした超電導体を使って論理回路を形成するには、SFQ(Single Flux Quantum)回路を用いる。図3に示すように、超電導体をリング状にすると、磁束(磁力線が集まったもの)を2.07×10-15Wbという単位ごとに閉じ込めることができるが、このことを磁束の量子化と言い、量子化された磁束の最小単位を単一磁束量子(SFQ:Single Flux Quantum)と呼ぶ。そして、この超電導リング中のSFQ の有無を情報の「1」と「0」に対応させて演算を行う回路がSFQ回路である。

超電導リングにSFQ を出し入れするには、ジョセフソン接合と呼ばれる能動素子を使用する。ジョセフソン接合は超電導体同士が弱く結合された構造になっていて、このジョセフソン接合にある一定電流(臨界電流)以上の電流を流すと超電導状態から非超電導状態に転移する。すると、リングの超電導が一瞬だけ壊れるので、このときリングにSFQを出入りさせることで演算を行うのである。SFQ回路はパルス論理回路で、論理振幅が1mV以下であることから、100GHzを超える超高速が可能で、このとき1ゲートあたりの消費電力が半導体に比べて6ケタも小さい。ただし、冷却のための電力が必要になることから実際には3ケタにとどまるが、それでも1000分の1で済む。また、SFQ は超電導配線中を光速に近いスピードで減衰なしに伝わることもできる。

 

超電導スイッチ開発の背景

超電導技術を利用すれば、現在の半導体技術によるネットワーク通信機器よりもはるかに優れた性能を持つ通信機器を開発できることはわかったが、それでは現在の半導体技術の限界はいつ頃やってくるのだろうか。それは、高度情報化社会の進展により、ネットワーク上の情報量が爆発的に増加するという市場予測から判断できる。たとえば、ルータの電力消費量は、半導体デバイスの低電力化が進んだとしても、2020年には爆発的に急増すると予測されている。また、ルータのスループットもCMOSクロックの伸びに依存することから1ラックあたり10Tbps程度が限界であると言われている。そのため、半導体の限界を打ち破る、低電力で高速のLSIを実現するための次世代技術が求められているのであり、超電導デバイスはその有力候補の1つなのだ。
 現在、製品化されている最も高性能な半導体ルータ(シスコシステムズ製)のスペックをベースに、CMOSスイッチと超電導スイッチを比較してみると表1のとおりであり、ハイエンドルータの実現技術としての超電導の優位性がよくわかるだろう。SFQスイッチは、CMOSスイッチに比べて、消費電力が冷凍機込みでおよそ30分の1、重量は100分の1、設置面積は14分の1で同等のスペックを満たすことができるわけだ。

表1 CMOSスイッチとSFQスイッチとの比較

資料提供:国際超電導産業技術研究センター

3.実用化への道のり

「低消費電力型超電導ネットワークデバイスの開発」プロジェクトにおける、超電導スイッチの動作実験成功の意義を列挙すると、以下のようになる。

 ○超電導スイッチを実用化できることを証明
 ○超電導スイッチを19インチラックにマウントできることを実証
 ○専門家でなく一般ユーザでも超電導スイッチを使うことができることを実証
 ○連続データに対して低エラーで動作できることを実証
 ○消費電力あたりの圧倒的なパフォーマンスを実証
 ○40Gbpsデータをシリアル処理できる高速性を実証
 ○高度な論理回路であるスイッチスケジューラを実現できることを実証

このように、高速性、高信頼性、低消費電力性、高機能性といった超電導スイッチの潜在能力の高さが実証されたことから、今後、大規模ネットワークルータ用スイッチの開発、あるいはネットワークの低消費電力化にも取り組んでいく計画になっている。同プロジェクトではSFQスイッチを用いた大規模ルータは2015年頃からネットワークの中で使われ始めると予想している。これが実現されると、冷凍機の消費電力を加味しても既存技術の1/10以下にルータの消費エネルギーを抑えることが可能となる。
 また、SFQ スイッチは経路を細かく切り替えることが得意であることから、これを活かした新しい分野での実用化も模索中だ。たとえば、光ネットワークのモニタリング機器や計測器への応用などが検討されている。こうした小規模な分野なら5年以内に実用化できる可能性がある。
 現行の半導体スイッチに代わる次世代のスイッチとして、SFQスイッチのほかに光スイッチも存在するが、両者を比較すると、得意とする領域に違いが見られる。光スイッチは、光信号をそのまま処理できるという大きなメリットを持つが、現時点ではスケジューラなどの複雑な論理回路を組むことができない。そこで、光パケットをデータとヘッダに分け、ヘッダをSFQ技術で処理し、データを光技術でスイッチすれば、現在よりも優れた製品を市場に提供できるようになる。

図4 SFQスイッチ実用化計画

資料提供:国際超電導産業技術研究センター

取材協力 :国際超電導産業技術研究センター

掲載日:2009年3月 4日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年2月6日掲載分

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