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デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「バイオ電池」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマ「バイオ電池」は、生体と同じ仕組みで発電する画期的な技術。コンビニで買ったおにぎりを食べて動くロボットも夢ではないかもしれません!?

1.バイオ電池とは?

1-1 人間と同じ仕組みのバッテリー!?

人間が主に炭水化物から活動エネルギーを得ているのはご存知の通りだが、その炭水化物の代表ともいえるのが、ご飯やジャガイモに含まれるデンプンを分解したブドウ糖である。私たちは、このブドウ糖を分解(呼吸・燃焼)することでエネルギーを得て、筋肉を動かしたり、脳の活動を行ったりしている。
 これとほぼ同じ仕組みで酵素を使って電力を得るのが、バイオ電池だ。CO2(二酸化炭素)の排出量が少なく希少元素を使わないので環境負荷の軽減が期待されるのはもちろんのこと、生物由来の物質だけで作ることができ、安全で廃棄物の問題もないなど、多くの利点を秘めた夢のエネルギーデバイスの1つである。

1-2 バイオ電池の仕組み

ソニーが2007年8月に発表したブドウ糖バイオ電池の仕組みは、次のようなものだ(図1)。化学反応として見るとピンと来ないかもしれないが、人間と同じように酸素と反応させることで、ブドウ糖のエネルギーを取りだしている。

図1 ブドウ糖バイオ電池の反応

資料提供:ソニー

マイナス側の電極には、ブドウ糖を分解する酵素と電子伝達物質が、糊の働きをするポリマーで固定されており、ブドウ糖を酵素で分解して水素イオン(プロトン)と電子を取り出し、電子は電極へと流れる(酸化反応)。




水素イオンはセパレータを通ってプラス側の電極へと移動し、空気中から取り込んだ酸素と電極から流入する電子との反応により水になる(還元反応)。





マイナス極での酸化とプラス極での還元という2つの反応は、セットでとらえると生体の呼吸によるエネルギー生成と全く同一で、私たち人間と同じように、ブドウ糖バイオ電池も酸素を空気中から取り込んでブドウ糖を燃焼させることで電力を発生させるのだ。

2.バイオ電池のメリット

ソニーの発表したバイオ電池は、まだまだ基礎研究の段階だが、発表時での世界最高出力となる50mWを達成し、4つの電池を直列することで、メモリタイプのウォークマンで音楽再生することに成功している(図2)。この実演を見ると製品化もそう遠くないと思われるこのブドウ糖バイオ電池だが、従来の電池と比べて、どのような点が優れているのだろうか?

図2 バイオ電池(左)とバイオ電池による実演(右)
  1辺39 mm容量40ccのキューブ状のバイオ電池を4つ直列してウォークマンを再生

資料提供:ソニー

Point1 CO2の排出が原則的にゼロ

バイオ電池の発電は、光合成で吸収されたCO2がブドウ糖となり、それを再び分解しCO2となる自然のサイクルの中の一部だから、CO2の排出は原則的にないと考えてよい。植物が太陽のエネルギーをブドウ糖などの形で蓄え、それを動物が食べてエネルギー源として使うときに、酸素を吸って二酸化炭素を吐く、というのが自然界のエネルギーの循環だが、バイオ電池を使用して動作する機器は、自然界の動物と同じようにブドウ糖を「食べて」動くことになるのだ。


Point2 希少な物質が不要

高価な希少金属触媒などを使わず、合成でつくれる酵素を使う点も環境負荷を小さくすることにつながるバイオ電池のポイントだ。ちなみにソニーの試作した電池は植物原料プラスチック(ポリ乳酸)を使用して、エネルギー源だけでなく筐体までが植物由来となっている。


Point3 高いエネルギー密度

本来ブドウ糖は極めてエネルギー密度の高い物質。ブドウ糖が鎖状に連なった物質がデンプンだが、お茶碗1杯分のご飯100gに含まれるデンプンのエネルギーは、単三アルカリ乾電池64本分ものエネルギーに相当する。もちろんこれは、CO2にまで完全に分解したときの数字であり、現段階で利用できているエネルギーはその一部に過ぎないが、バイオ電池のポテンシャルは極めて高く、安価軽量高性能な電池を実現する可能性を秘めている。


Point4 優れた安全性

バイオ電池は、ブドウ糖、酵素、ポリマーなどどれも人体に無害なもので構成されており安全性は高い。電解質も中性のものを用いるため、液漏れ事故が起きてもその危険性は、アルカリ電池などの強アルカリ電解質を用いるような電池と比較して、はるかに低いといえる。

3.バイオ電池の課題と将来像

3-1 実用化に向けてはまだ課題が多い

大きな可能性を秘めた新しいエネルギーデバイスであるバイオ電池だが、その実用化にはまだまだ多くの課題がある。


課題1 発電性能の向上

現時点で世界最高である50mWの出力をソニーの試作品は達成したものの、実用するには更なる出力の向上が必要である。そのための取り組みとして、酵素の触媒としての活性を更に向上することや、電極構造の改良により反応表面積を増大させることなどが、研究中である。


課題2 セルの寿命向上

モバイル機器などのエネルギー源として使うためには高い耐久性が必要だが、現段階では酵素の耐久性が不足している。また、酵素の電極への固定化方法もその安定性が不十分なため改良が進められている。


課題3 ブドウ糖の高いエネルギー密度の活用

ブドウ糖は、エネルギー密度の高い物質ではあるものの、グルコノラクトンと水に分解するところまでしか利用していない。すべてのエネルギーを取り出すためには、CO2と水にまで分解しなくてはならないが、そこまで到達するにはまだまだ多くの研究が必要である。

3-2 バイオ電池の実現する未来

生体の主要なエネルギー源であるブドウ糖は、生産も容易で効率が高く、環境負荷が少ない理想的なエネルギーである。エネルギー密度が高いため、モバイル機器などに搭載することができれば、現在よりもより軽量で、長持ちするバッテリーとなることだろう。ソニーの試作品ではブドウ糖を含むスポーツドリンクを使った発電も実演されたが、現在充電という方法で行っているモバイル機器のエネルギー補給を、私たちと同じようにブドウ糖を「飲む」ことや、デンプンを「食べる」ことで行うことも可能になるかもしれない。ご飯を食べて動くロボットも夢ではなくなるのだ。そこまでの未来でなくても、ノートパソコンや携帯電話のバッテリーが切れた際に、砂糖水を補給すれば仕事が続けられるとしたら、極めて便利なことだろう。そんな未来への第一歩が、今回のソニーによるウォークマンの再生だといっても過言ではない。

取材協力 :ソニー株式会社

掲載日:2008年11月25日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2008年1月23日掲載分

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