本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > デジ・ステーション

デジ・ステーション


5分でわかる最新キーワード解説
「ブレイン‐マシン・インターフェース」ってなんだ?!

日々進歩するIT技術は、ともすると取り残されてしまいそうな勢いで進化の速度を高めています。そこでキーマンズネット編集部がお届けするのが「5分でわかる最新キーワード解説」。このコーナーを読めば、最新IT事情がスラスラ読み解けるようになることうけあい。忙しいアナタもサラっと読めてタメになる、そんなコーナーを目指します。今回のテーマは「ブレイン-マシン・インターフェース(BMI)」。この技術が実用化されれば、「思い」をそのまま機械に伝えることができるようになります。あの「ロボコップ」のような人間の脳を持つロボットの実現も不可能ではないかもしれません?!

1.ブレイン-マシン・インターフェース(BMI)とは

ブレイン-マシン・インターフェース(Brain-Machine Interface、以降BMIと表記) とは、脳と機械を直接つないで相互に作用させるシステムのこと。たとえば、BMIで脳とコンピュータをつなぐことができれば、コンピュータに文字入力する場合も頭の中で文章をイメージするだけで文字入力が可能になり、マウスやキーボードがいらなくなるだろう。身体に障害があって手足が思うように動かせない場合でも、頭で考えることでその動きを実現できるようになるかもしれない。

現在、BMIという言葉は狭義で用いられる場合と広義で用いられる場合がある。狭義でのBMIは、脳の情報を読み出して機械やロボットを動かすシステムを指す。広義では、脳から情報を取り出すだけでなく、脳へ情報を入力する(つまり、脳を刺激する)という使い方も含まれる。

一方、研究開発という立場からBMIを説明すると、BMIとは脳の情報処理方式を直接活用するための新しいハードウェア技術とソフトウェア技術をともに開発し、これまでにない斬新な情報通信システムを作り出すことである。つまり、BMIの開発によって、ダイナミックな高次機能を実現している脳の情報処理方式の解明も進むのである。

■ブレイン-マシン・インターフェースには3つの分類がある

図1 運動出力型BMI

資料提供:京都大学大学院文学研究科 心理学教室

京都大学大学院文学研究科心理学教室・科学技術振興機構の櫻井芳雄教授によると、現在研究されているBMIは運動出力型BMI、感覚入力型BMI、直接操作型BMIの3つに大別できる。まず、BMIの最も一般的なイメージである運動出力型BMIでは、脳の神経活動のうち、運動出力を表現する活動を検出・利用してロボットなどの外部装置を制御する(図1)。このタイプはさらに、脳に電極を刺し、そこから神経細胞であるニューロン活動を検出する「侵襲式」と、脳に直接手を加えることなく頭皮または頭部の近くから脳の活動を検出する方法で、脳波や血流中の還元ヘモグロビンなどから推定する「非侵襲式」の2つの方法に分けることができる。


図2 感覚入力型BMI

資料提供:京都大学大学院文学研究科 心理学教室

2つ目の感覚入力型BMI(図2)は、脳の中に信号を送り込んで、様々な感覚を生起・増強することを指す。この分野のBMIの中にはすでに実用化が始まっているものもあり、その代表例が人工内耳である。これは聴覚神経系への電気刺激で聴覚を再建する人工臓器で、すでに世界で7万人以上の聴覚障害者が埋め込み手術を受けて、失われた聴覚を取り戻している。感覚入力型BMIではこのほか、人工視覚、人工触圧覚なども研究されている。

3つ目の直接操作型BMIは、脳内を直接刺激することで、障害をもつ様々な機能を回復させる技術のこと。これもすでに実用化が進んでいる分野がある。たとえば脳神経外科では、パーキンソン病やジストニアの患者に対する1つの治療法として「脳深部刺激療法」が取り入れられている。



2.現在までのブレイン-マシン・インターフェース研究の成果

■ニューロンとシナプスから脳の信号を取り出す

ここで、BMIを理解するために必要な、脳科学の基礎知識に簡単に触れておこう。脳は、ニューロン(=神経細胞)と信号を伝えるための特殊な細胞からなる巨大なネットワーク(=神経回路網)と考えることができる。ニューロン同士の接点はほんのわずか離れているが、この部分はシナプスと呼ばれる(図3)。これまでの研究により、このシナプスの部分から様々な神経伝達物質が放出されていることが分かっている。

ニューロンがほかのニューロンからの信号をシナプス経由で受信すると、普段はマイナスの内部電位であるニューロンがその瞬間だけプラス側に変動する。こうした電位の一定以上の変化をニューロン活動として測定・解析すれば、脳の信号によって機械をコントロールできるのである。

ニューロン1つ1つはメモリ機能(シナプス)を搭載したプロセッサと考えることができる。人間の脳の場合、1万のシナプスを持つニューロンが1000億以上あることから、脳の中には1000億×1万=1000兆の接続をもつ回路網が存在していることになる。

こうしたニューロン活動は直接測定することが可能だ。先端が数マイクロメートルほどの細い電極を脳に差し込み、それをニューロンのそばに近づけ電気信号として取り出すのである。このとき脳には痛覚がないので、麻酔をかけることなく電極を差し込むことができる。


図3 ニューロンとシナプス


■餌がほしい!というネズミの思いが伝わる装置

ここでは、運動出力型BMIの注目すべき研究成果の1つを紹介しよう。図4は、京都大学の櫻井教授によるラットを使ったBMI実験システムだ。この研究の目的は、ラットの脳神経活動を多数のニューロンから同時に取り出して解析することで、意味のある神経情報を抽出し、それを制御信号に変換して機械を直接操作できるようにすることである。


図4 ラットを使ったBMI実験システム

資料提供:京都大学大学院文学研究科 心理学教室


まず、鼻先を穴に入れると餌が出てくるという単純な課題をラットに学習させ、それと同時に、そのときのニューロン活動を記録・分析する。次に、穴に鼻を入れなくても、同じニューロン活動をBMIがラットの脳から検出したときには餌が自動的に出てくるようにしておくのである。つまり、リアルタイムで特定のニューロン活動を検出し、その特定パターンを制御信号に変換し機械を操作して餌を出すようにしたのである。この結果、ニューロン活動のパターンからラットの行動を予測する計算モデルを、これらの実験データの解析とシミュレーションから作り上げた。

3.ブレイン-マシン・インターフェースの将来

BMIが高度に発達した未来社会では、一体どんなことが実現されているのだろうか。実は、BMIはSF世界の夢というだけではなく、社会への貢献が期待できる素晴らしい研究テーマだ。

たとえば、事故などで脳が大きなダメージを受けて意識が回復しない状態、いわゆる「植物状態」になってしまった場合だ。最近の研究では、こうした状態において、実際には意識があるにも関わらず、それを表出する機能が失われているだけというケースがあることが分かってきた。もしそうであれば、その患者の脳の中には様々な情報を表現する神経活動が生じているはずであり、それを検出してBMIにつなぐことができれば、事実上、意識が回復したのと同じ状況を作り出すことができるかもしれない。

また、高齢化社会を迎える日本に新たな希望を与えてくれる研究も始まっている。高齢化により運動出力系が劣化した場合、これを機械出力系に置き換えることで、高齢脳が本来備えているかも知れない学習能力と可塑性(新しい機能を獲得しそれを維持する性質)を検出する試みが行われている。この研究により、高齢脳が若い脳に負けない学習能力と可塑性を備えていることがわかれば、高齢化社会にとって大きな意味を持つことになるはずだ。

このほか、身近でありかつユニークなところでは、頭の中で考えただけで3次元バーチャルコミュニティ「Second Life(セカンドライフ)」内を散歩できるBMIが開発されている(慶應義塾大学)。被験者が運動をイメージすると、コンピュータがその脳波変化を自動分析し、運動イメージにあわせてSecond Life内のキャラクター(=アバター)を操作する信号を送出する。従って、被験者は実際に手足を動かすことなく、頭の中で手や足の運動をイメージするだけで、3次元仮想世界の中を散歩できるという。

ただし現時点では、BMI研究の多くは「人が抱えている何らかの身体的障害を補う」ことが大きな目的となっている。これは、本来のBMIからすれば非常に限定的なものにとどまっている。しかし、この分野の研究は近年めざましい進化を遂げているので、やがては、身体的障害の補完にとどまらず、機能拡張に発展するようなBMIも実現されることだろう。

なお、BMIについてもっと詳しく知りたい場合には、工業調査会発行の『ブレイン−マシン・インタフェース最前線 −脳と機械を結ぶ革新技術−』(櫻井芳雄・八木透・小池康晴・鈴木隆文)を一読されることをお薦めする。

取材協力 :京都大学大学院文学研究科心理学教室・科学技術振興機構 櫻井芳雄研究室

掲載日:2008年11月19日

キーマンズネット

出典元:株式会社リクルート キーマンズネット 2007年11月07日掲載分

検索

このページの先頭へ