本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > 2030年に向けたビジネスの種

2030年に向けたビジネスの種 −未来の市場にはチャンスがある

バックキャスティングでいこう(1/2)

バックキャスティングでいこう 経済・環境・人のことを考えたライフスタイルを描く 古川柳蔵(ふるかわ・りゅうぞう)東北大学大学院環境科学研究科准教授

古川柳蔵(ふるかわ・りゅうぞう)

2011 年、日本は東日本大震災により甚大な被害を受け、多くの人の価値観が変化し、省エネ行動が増え、食に対する意識も変化しました。私たち一人一人が持続可能な社会のあり方について考え始めたといえるかもしれません。エネルギーシステムをどうするのか、食料供給システムをどうするのか、経済活動はどのような方向にむかうのか、このまま行くと、この社会は持続可能ではないということに気がついたと言えるでしょう。

ところが、私たちのライフスタイルを変えることは容易ではありません。自動車通勤から公共交通機関での通勤に変えなさいと言われても、便利だった自動車通勤から、不便な方法による通勤に変えたくないと思うのは当然です。ライフスタイルを変えることにいくつもの障壁が存在するのです。

ライフスタイルを変える障壁の一つは、生活者が現在の延長上の暮らしを求める傾向です。これをフォアキャスティング的思考と呼ぶことにします。私たちの生活は、基本的には、既に普及しているエアコン、冷蔵庫、自動車などのものに依存しています。時々、これら既存のものに新機能が搭載され、新モデルの商品が販売されます。これに買い換えることで生活者は満足します。ライフスタイルを変えるほどの新商品というのはなかなか登場しません。機器自体は高効率化が進み、部分的に環境負荷が下がる方向に向かいますが、抜本的にライフスタイルを変え、環境負荷も大きく削減できるという商品はほとんどありません。事業者側も現在の延長上の暮らしのシーンを思い描くフォアキャスティング的思考に束縛されているからです。

未来の社会の想像図は、フォアキャスティング的思考により描かれ、一般に公開されることが多いようです。これらのほとんどは現存する技術の高機能化、あるいは大型化の絵が描かれています。ビルが高層化して(大型化)、バーチャルに人とコミュニケーションをとり(高機能化)、木々が減って無機質的なものが溢れているのです(高機能化)。未来的なイメージは、建造物の形状で表現され(円形状のものが増える)、空を飛ぶなど昔からの人類の夢が実現されるものとして表現されます。フォアキャスティング的思考は、そもそも現在の延長線上を描くことであり、私たちが抱える環境問題を解決するソリューションが、そのプロセスから生み出されることはありません。

バックキャスティングとは

このように、フォアキャスティング的思考は、東日本大震災後の日本における節電、使用削減といった環境負荷低減の対策に偏ってしまい、新しいビジネスが創出されないことからもわかるでしょう。結局、環境的に部分最適化のライフスタイルに向かってしまい、心豊かなライフスタイルの実現から離れてしまっています。

環境問題解決のための対策として、本来、ライフスタイルの全体最適化を目指さなければなりません。避けられない厳しい環境制約下において、生活者の消費行動を大きく変え、低環境負荷を実現し、制約をポジティブに捉えなおし、心の豊かさを増す方法を考えなければ、節電、削減という貧しいライフスタイルに向かっていくだけです。地球上に人が暮らしているのですから、経済と環境のことだけを考えるのでは不十分です。経済と環境と人のことも考えた対策を練らなければ、おかしなことになってしまいます。環境負荷が下がったとしても、貧しい生活になってはなりませんが、一方で、心の豊かさだけを優先して、地球を破壊してもいけません。

このようなソリューションを探すためには、フォアキャスティング的思考ではなく、将来、社会的な問題が想定される時に、それを避ける道筋を考えるバックキャスティングという手法が考えられています。バックキャスティング手法は、1970 年代にLovins (1976) 及び、Lovins (1977) によって、電力の需給計画として提唱され、”Backward-looking analysis”の名称で、エネルギー政策の分野を中心に適用されました。Dreborg(1996) は、「フォアキャスティングは、主要な社会動向に基づいて実施されるため、その動向を打破するための解決策を導くことが難しいのに対し、バックキャスティングは、その規範的で問題解決型の特徴から、長期的な問題や長期的なサステナビリティの問題に適用しやすく、また、政策決定者や一般社会に対して、意見形成や意思決定のための、将来のイメージを提供することが目標となりやすい」と述べ、バックキャスティングのサステナビリティの分野への適用の有用性を示したのです。バックキャスティングとフォアキャスティングとは相互補完的関係にあることなどが指摘されています。

私たちは、この手法を応用し、「バックキャスティングを用いたライフスタイル・デザイン手法」を開発し、ライフスタイル研究を行ってきました。フォアキャスティング的思考では思いつかない新規なライフスタイルを、バックキャスティング的思考を用いて、2030年の厳しい環境制約の下でも心豊かに暮らせる数多くのライフスタイルを描いてきました。

このページの先頭へ