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03 それいけ!ベンチャーファンド

第4回:投資会社に聞く!支援の現場では

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さて、ファンド活用についてとりあげたこのテーマもとうとう4回目になりました。最終回は、ベンチャーファンドを運営し、数多くの会社を株式公開させた実績をもつ投資会社に、実際、投資を決めるときは、何を見るのか? 現場での支援で何が重要になるのかについて聞いてきました。

※本コンテンツは、平成17年度の情報です。

投資会社は企業の何を見ているのか

投資会社は企業の何を見て、投資を決めるのかについては、きっぱり「成長性」とのこと。で、成長性ってなんだろう?第1回では「可能性」という言葉で表現したけれど、「可能性」と「成長性」は同じようで違う。何が違うかって、可能性は、「いつ、どのように」というのは問わなくても、そこに1%でも可能性があればそれは「可能性」と言う。しかし「成長性」はそうじゃない。そこでは「期間」が前提になっている。「ある期間」で「どれだけ伸びるか」を考えているのが「成長性」という言葉じゃないかと思う。もちろん、成長性というのは、事業である以上、市場の変化と大いにかかわることであって、この場合、市場とともに大きくなれる企業かどうかとも言い換えられるかもしれない。

で、実際には、事業計画の立て方や、書き方については、アドバイスが受けられるわけで、大切なのは、将来といっても、遠い未来の遠大な構想ではなく、「近い将来の限られた期間」のなかで、市場をにらみつつ「このように変わっていきたい」というビジョンが明確に描けるかどうか。きちんと目標をたてて、それを達成できる力があるかどうかということだと言えそうです。

投資会社が投資を決めるとき

さて、投資を受けるにあたっては、必要となる資料というのがあります。「定款」「登記簿謄本」「事業計画書」「決算書」「税務申告書」「監査法人の短期調査報告書」などなど。こうして見ると、ほんとうに、提出しないといけない資料は多い。

しかし、それは事務作業レベルの話だというのが投資会社の言。もちろん、書類を揃えられることは大切だし、提出してもらった資料から見えてくることもある。だけど、アーリーステージにある企業や、大学発ベンチャーの場合のように、そもそも資料が用意できないということもある。たしかに、会社設立1年目、とか、コアとなる技術を持っていて、市場に出すまでのスピードが問われる場合は、そもそも会社が設立されていないケースだってあるわけだから、そんな状態で資料など作れるわけがない。

でも、こういう、会社組織は成り立っておらず「技術を持った人だけがいます」、という場合でも、それが先進的で事業化に値する技術なら、投資をする場合があります。

ただし、技術研究の人だと、経営のことは全然わからないということが、しばしば。そこで、経営面のバックアップということで、この場合、経営ができる人々を、支援の一環として派遣したり、紹介したりして、会社としての経営体制をつくるところからはじめます。ですから、事業計画書の作り方などについての支援を受けることもあるというわけです。

たしかに資料の作成は大変だけれども、事業計画書などの書類作成は慣れるもの。初めてやることだから、時間がかかるということもあって、そのうち書けるようになるのだとか。

実は、それより重要なことは、「経営」や「事業化」、「会社という組織」というものが何かについて共通の理解がないことだと言います。

重要となる共通理解

どういうことかと言うと、例えば、大学発ベンチャーの場合。やはり、理解はしておられるのだけど、経営や、会社組織ということに馴染みがなくて、どうしても、研究のほうに向いてしまいがちになる。そして、研究サイドから話をされることが多いので、事業化や企業化についての話となるとかみあわないことがある、というもの。

この場合、研究と事業の違い、事業化とは何か(売れるモノをつくるということなど)、事業をおこすということはどういうことなのか、というところから話をはじめなければならず、最終的な事業化のイメージについて共通認識を作っていくところに時間や労力がかかるのだそう。

また、たしかに画期的なビジネスモデルを持っているのだけれど、その事業の拡大よりも、自分が作った会社だということもあって、会社という組織をいかに作り、存続させていくかのほうが大事、と考える人もいる。

案外、投資を受けて事業化や企業化を目指そうとするのだから、この点においては共通理解があるかと思いきや、そうでもないんですね。おそらく実際には、何となくの共通理解はあるのでしょう。だけど、細かいところで、違っていたりして、そういう細かい違いが、現場での、場面ごとで大きな問題になるということなんだと思われます。

投資を受ける側に必要とされること

というわけで、いろんなパターンがあるのだけれど、こういうとき、投資会社はどう考えるのか。投資会社が見るのは、その会社の「なりたち」なんだそうです。どういう経緯で事業化を目指したのか、どういうふうに会社組織ができているのか、ということを重視する。数多くの企業を上場させてきた経験から、ノウハウが蓄積されているので、企業のなりたちに応じた対応をすることが可能なのです。

とは言っても、もちろん、第2回目でも述べたように、それに甘んじていてはいけません。というのも、ときには、事業化、企業化についての認識のズレが問題で、やむを得ず投資を見送ることもあり、これは、企業にとっても(技術を持っている方にとっても)、投資する側にとっても、双方にとって不幸なこと。投資を受ける側も、この点をよくわきまえて臨むことが必要ということと言えそうです。

「人」が会社を作る

 そして、これに加えて補足しておきたいことが一つ。

投資会社からも決定が出て、投資を受けられるようになりました。次は株式公開を目標にステップアップしていきます! では、ここで質問です。株式公開が成功する要因は何だと思いますか?

実は、投資が行われることによる「資金力」ではないのだと言います。で、重要なのは、「人」なんだとか。

これは、さきほど述べたことと大いに関わるところで、例えば、技術開発をしている研究者一人では、組織化して、事業を展開していくことはできない。だからそこは、経営ができる人材を派遣するなり紹介するなりして体制を整えるのだという話をしました。そして、この経営ができる人、つまり、マネジメント能力がある人が、企業を企業として成り立たせる鍵になるのだと言います。

マネジメントとは?

では、マネジメントとはどんなことを言うのでしょう。これを「経営管理」と訳すと、ちょっと、違うような気がします。

ところで、第3回では、ハンズオン支援は、企業の分野や成長のステージに合わせた支援が行われるのだという話をしました。例えば、技術開発分野では、技術分野に詳しいスタッフによって体制が組まれるし、販路開拓が必要なときには、取引先の紹介なども行われます。

で、ここでいうマネジメントとは、一つは、こうした、技術などについて目利きができるという能力です。そもそも目利きができなければ、先進性のある有望なシーズは発掘できないのですが、それだけでなく、目利き能力は、販路の開拓にも影響します。

そして、このようにシーズの発掘から販路までを含めた、事業化の計画が立てられるというのも、マネジメントの一つです。ここにおいては、事業を実現するために、どの段階で、どの程度のお金が必要かというのを、具体的に計画できる必要があります。

それから、取引先を開拓するにあたっては、技術について、わかりやすく説明する必要があります。ここでは、単に、技術に詳しいというだけでなく、プレゼンテーションの能力が問われます。加えて、プレゼンテーションをしたら、すんなり進むというわけではありませんから、そこは、交渉力が必要になるわけです。

加えて、組織となる以上、組織をまとめる力も必要で、また、現状、足りない部分は何なのか。どのように補完すればよいのかといったことが見通せ、実行できる力も必要です。

なるほど、こうしてみると、たしかに、マネジメント能力が、企業を企業として成り立たせる鍵になるということは、肯けます。もちろん、この能力をすべて兼ね備えた人は限られているわけで、だからこそ、ハンズオン支援が重要になるのです。

そして、企業の成功の鍵がこのマネジメントにある以上、マネジメントをする人たちと事業化や企業化、今後の方向性についての認識にズレがあると、うまくいかないということになるわけなんですね。

投資会社によるハンズオン支援

さて、企業のパターンや、状況に合わせて、必要な人材を紹介(*)し、体制を整備することがハンズオン支援の一環でもあるわけですが、そもそも、大学発ベンチャーのように会社が成り立っていない場合だと、経営者そのものを紹介するということもありますし、状況に応じて監査法人、弁護士、弁理士などを紹介するということもあります。それは、本当にさまざまなんだそうです。

で、今まで述べたことをまとめるならば、投資会社によるハンズオン支援というのは、

そうすることで、経営体制を整え、企業を成長させていくことと言えるでしょう。

ちなみに、後者の自らの「役割を果たせない」場合は、やめてもらって、別の人を紹介することもあるぐらいなんだとか。株式公開に向けて、かなりシビアな判断をするようです。実際、現場では、忌憚なく意見を述べることがあるようですが、それも、その会社の将来を考えてのこと。当然と言えば、当然のことで、厳しい意見も冷静に受け止められるということも、投資を受ける企業にとって必要なことと言えるでしょう。

主役は企業

それから、人材の紹介という支援については、投資会社は人材派遣会社ではないということは認識してもらいたいことだと言います。

例えば、販路開拓支援といっても、単に会社として営業スタッフを増員したいということであれば、それは、人材派遣会社にお願いすることです。また、取引先の紹介といっても、投資会社が、商材を売って歩くわけではありません。そして、技術開発をしていて、それが、そもそもどこにニーズがあるのかについて知らない。販売となったら、すべておまかせで「私、開発する人。あなた、売る人」というようなことでも困ります。

ここで言う、販路開拓の支援というのは、その企業にとっての、営業の方向性や展開の仕方を計画したり、それを実行するための営業の基本的な体制づくりの支援をするということ。だから、取引先の紹介というのも、新たな市場展開に結びつくような、より全体的なレベルでの取引先ということであって、目先の売り上げを伸ばすための販売先ではありません。そこは、企業が頑張るところです。

忘れないで欲しいのは、主役はあくまでも企業なんだということ。パートナーとはいえ、投資会社はあくまでも脇役。しかも、株式公開したら、投資会社は必要なくなるのです。そもそも、投資会社の支援を受けなくても、うまくいくというのが望ましい状態なのです。その意味では、企業としての基礎体力をつけるのが、投資会社の支援とも言い換えられるかもしれません。自らが主役であることを忘れず、主体性を持って取り組んで欲しいというのが、投資会社の願いなのです。

接触の機会

ところで、実際、株式公開にまでいたる企業はどれくらいあるのか? 取材をさせていただいた投資会社の場合、ウォッチしている企業がだいたい7000社。そのなかで、投資をすることを見込んでいるのが2500社くらい。実際に、投資対象とするのが、400社。そして、株式公開にまでいたるのが70社くらいだと言います。

つまり、ウォッチしている企業から見ると、株式公開に至る会社の割合というのは、約1%ということになる。でも、実際に、投資対象になった企業が、株式公開に至る割合というのは、17.5%くらい。これは、まだ株式公開を目指している途中のものも含まれているから、今後、数字がUPする可能性がある。そう考えると、たしかに株式公開は狭き門だけれども、実際に投資を受けた企業が株式公開する割合から見れば、投資会社のハンズオン支援の効果は大きいのだと言えます。

現在のところ、投資会社は、独自のルートで、さまざまな企業のウォッチをしているのですが、では、いったいどうしたら、投資会社の目に留まることができるの?どうしたら、投資会社にエントリーができるの?というところが気になります。

これについては、一つはビジネスモデル発表会に出るという方法があります。例えば、中小機構では、毎年、「ベンチャープラザ(新規ウィンドウ)(*)」や「ベンチャーフェア」というイベントを開催しています。これは、ベンチャー企業にとって事業の発展に不可欠な経営資源(資金/事業パートナー/販路)と出会う機会を提供するマッチングイベントです。投資会社も参加する、このイベント。残念ながら、今年は、参加者の受付は終了してしまいましたが、イベントの開催はこれからのところもあります。全国各地で開催しますから、どんな様子なのか、是非、一度ご来場ください。

また、もちろん、中小機構のファンド事業「ファンド検索(新規ウィンドウ)」から、事業に適したファンドを探していただき、投資会社に直接アプローチするという方法も。自らが投資会社の扉を叩くことで、投資の話がすすんでいる例もあります。

そのほか、中小機構等が開催するセミナーに参加するも良し。事実、セミナーに参加したことで投資会社の目に留まった例もあります。投資会社はいろんなところで企業をウォッチしているんですよ。

ベンチャービジネス支援の今後

さて、第3回で、1998年以降の新興市場の創設が大きな契機となって、ベンチャービジネスを支える環境が整備されてきたというお話をしました。これにより、資金調達の手段が増え、経営環境の変化に応じて、より適したものを選ぶことができるようになってきました。

今回、取材した投資会社によれば、銀行には銀行の役割があり、投資会社には、投資会社の役割がある。お互いに、環境の変化に応じて、役割を変化させていくけれど、それは、どちらかの役割が必要なくなるということではない。役割をすみわけながら、互いに、補完しあうようにしていくことが重要なんだと言うことです。

そして、今後は、この投資会社が投資しているのだから、この企業は信頼できる、というように、ファンド活用のカルチャーを成熟させていきたいともおっしゃっていました。

今後も、経営環境はもっと急速に変化していくでしょう。そして、金融機関も環境の変化に応じ、それぞれの役割を常に見直し、変化させながら対応していくようになってきています。

そうしたなかで、制度を活用する企業の側の姿勢も問われます。選択肢が複数用意されるということは、選ぶためには、制度を、そして企業を取り巻く環境をよく知らなくてはいけません。市場を読み、金融の変化を読み、自分の企業の成長ステージにあった制度を選ぶ。そうしたより賢い利用者になることも求められていると言えるでしょう。

さて、4回にわたって、中小機構のベンチャー支援のひとつ、ファンド出資事業についてご紹介してきました。ベンチャー企業がさらに活躍の場を広げられるよう環境を整備してきた中小機構、今後も、さまざまな機関と連携を深めながら、よりよい基盤の整備にむけて、邁進いたします。

次回からは、こちらもベンチャー企業を支援するインキュベーション施設。中小機構ならではの支援についてご紹介していきます。お楽しみに!

 

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